補助金不正受給や突然の廃園…保育園で不祥事多発、企業参入は大丈夫か
「ゼロ歳児保育など、大都市特有のニーズに応える」「東京から保育を変える」などの触れ込みで2001年度にスタートした東京都独自の認証保育制度--。保育分野への企業参入の呼び水となった同制度が、相次ぐ不正行為によって信頼を大きく損なう結果を招いている。
東京都内の認証保育園では、08年3月に「日本保育支援協会」(三谷忠士社長)が運営していた「じゃんぐる保育園」(荒川区)が、実在しない職員を記載した名簿に基づいて開設準備経費や運営費補助金(約3800万円)を受け取ったことが発覚し、認証取り消し処分を受けた。
同12月には、小田急電鉄系列の「小田急ライフアソシエ」(土屋忠之社長)が運営する「小田急ムック成城園」(世田谷区)でも、運営費補助金の不正受給が発覚。同じ駅ビル内での複合事業である一時預かり、子育て相談業務での不正受給も判明し、同社は3事業に関して総額約3000万円の補助金返還命令を都や世田谷区から受けた。
一方、同10月末には、都内や埼玉県、神奈川県で保育園や学童保育など約30カ所の児童施設を運営していた「エムケイグループ」(初見雅人社長)が、突如、全園を閉園。大混乱を引き起こした。同社は中野区で認証園「ハッピースマイル東中野駅前園」を9月1日に開設したが、わずか2カ月で閉園。父母にその知らせがあったのは、閉園当日の10月31日で、中野区や都には連絡すらなかったというから驚きだ。
企業参入へ規制を緩和
共働きの両親を持つ幼児にとって、保育園は一日の多くの時間を過ごす大切な場所である。子どもの健やかな成長を目的とした保育園は「第2の家庭」ともいわれ、児童福祉法第24条では、市町村に保育実施義務を課している。そして同法の趣旨を実現するために、国が認可制度を創設し、わが国の保育は認可保育園を軸に、公立保育園または社会福祉法人を中心とした民間の非営利事業者によって担われてきた。
その認可制度を「時代遅れ」「コスト高」と見なし、独自の制度を打ち出したのが東京都だった。石原慎太郎知事の就任から2年後の01年度に、都は園と利用者の直接契約方式、保育料の自由設定方式(上限の範囲内での保育料自由設定)を盛り込んだ独自の認証保育制度をスタートさせた。
当時、都の担当幹部は、認可園の多くが保育時間の延長に後ろ向きで、ゼロ歳児などの低年齢保育にも消極的と指摘。「莫大な公費を投入していながら、利用者の多様なニーズに柔軟に対応できていない」と厳しく批判した。そして「東京発・福祉改革」の目玉として打ち出されたのが、認証保育制度だった。
08年4月1日時点で、企業を主な事業者とした「認証保育園A型」は321カ所に達し、そのうち株式会社による運営が225カ所、有限会社による運営が38カ所となっている。そしてゼロ歳児など低年齢児を中心に約1万2700人(08年4月)が認証保育園で保育されている。都内の認可保育園で保育を受けている児童数約16万人と比べると少ないが、ここ数年、認証保育園の受け入れ児童数は急増している。