渋澤 うん。それはわかるのだけど、5月の時も量的緩和の縮小をほのめかしたよね。あの時は一時1ドル=103円台から93円台までドルが急落しているのに、今回はドル高が進んでいるわけで、この反応の違いってどこから来るんでしょうね。
有終の美を飾った、バーナンキ議長
藤野 投資家の学習効果もあるんじゃないでしょうか。
中野 今回は米国経済の足腰が強くなったということを、素直に評価しているように思えます。実体経済の回復色が強まり、マインドも変わってきたのではないでしょうか。今回は対円だけでなく、他の通貨に対してもドル高が進んでいます。つまり円安というよりもドル高色が強いわけで、それはテーパリングの実施=米国経済の回復への足取りが、今まで以上にしっかりしてきたものと市場が判断しているわけです。
渋澤 2012年の秋口から2013年の春先にかけては、日本のアベノミクスと異次元金融緩和が材料視されて、円がどんどん売られました。この時、ヘッジファンドなどの投機筋の大量の円売りポジションが積み重なっていたと思います。ところが、FRBが5月に突然量的緩和を縮小するなどとほのめかしたものだから、金融の引き締め局面が訪れると認識して、いったんポジションを閉じたと推測できますね。
その調整を経たので、今回は前回のようにドル売りのポジションが積み上がっていなかったのかもしれないですね。だから、特に円を買って手仕舞う必要もなかった。だから、為替市場は円安に触れやすい環境だったのかもしれないですね。
藤野 いずれにしても、バーナンキFRB議長は有終の美を飾りましたよね。リーマンショックの直後、FRB議長に就任して、目の前に迫った危機を打開すべく思い切った量的緩和に出た。そして景気も金融市場も安定させて、最後はテーパリングで終わる。実に美しい。バーナンキさんは名議長として、後世に名を残すでしょう。
渋澤 前FRB議長だったグリーンスパンは逆でしたよね。一時は市場との対話のうまさから、グリーンスパンマジックなどともてはやされたけれども、結果的にはリーマンショックの元凶とまで言われてしまいました。
中野 でも、このままドル高は進むのでしょうか。2月には再び「財政の崖」問題が出てきますよね。
藤野 米国は見る人の立場によって大きく変わるみたいですね。たとえばミクロで見ている人は楽観的ですが、マクロで見ている人、政治寄りの人は悲観的です。ここが面白いところなのだけれども、起業家の観点から見れば、米国経済って本当にすごいと思いますよ。だって、新たな産業がどんどん現われて、優秀な人材が輩出され、そこにベンチャーキャピタルなどの金融がリスクマネーを供給し、企業が育ち、新たな雇用の場を創り出していく。その意味で、米国経済は本当にすごい。
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