「長男を出産するとき、親に期待した。お兄ちゃんはまだ子どもができていなかったから、初孫だって喜んでもらえるかなって。中絶してもよかったけど、両親の喜ぶ顔に期待して結婚と出産を決めた。兄の嫁にも何度も電話して出産の予定がないことを確認して、婚姻届をだしました」
長男が生まれてしばらくは両親もかわいがってくれた。しかし、長男が2歳のとき、兄の嫁から妊娠したことを聞いた。両親は「やっと、跡取りが生まれる!」と心から喜び、それ以来、長男に関心を失ってしまった。
「たぶん精神がおかしくなったのは、そのときから。お兄ちゃんの家に子どもが生まれなければ、全然違った。初孫だったので両親にかわいがってもらえるって舞い上がっていたので、地に突き落とされた気分でした。兄の子どもを殺しに行くしかない、って本気で思った」
誰かと肉体関係がないと不安になる
沢田さんは夫に心療内科に連れていかれた。境界性パーソナリティ障害と診断された。気分の波が激しく不安定で、強いイライラ感が抑えられなくなる症状がある。幼い時期に母親と安定的な関係が築けなかった、親から褒められたり認められた経験不足などが、発症の原因になることもあるという。
「言いにくいのですが、誰かと肉体関係がないと不安になる。結婚してしばらくはよかったけど、夫に毎日毎日求めてしまって、あるときから夫は求めるほど、逃げていきました。疲れているとか、もう勘弁してくれとか。それでイライラして暴れたり、見捨てられたと延々泣き続けたり。
そんなときに出会い系サイトを知って、そこでの男性との出会いに依存するようになりました」
最終的に肉体関係を拒否する夫に暴力をふるった。まずい、いけないという自覚がありながらも自制できない。暴れるほど、夫婦関係は険悪になった。
出会い系サイトで男漁りが止まらなくなって、長男の育児を放りだして毎日のように不貞行為を続けた。34歳、夫の強い要望で離婚した。養育費は月4万円となって、元夫は現在も払い続けている。
夫に逃げられて、つねに不安定な沢田さんと就学前の長男だけが残された。どうしていいかわからなくなり、最後の願いと思って母親に「帰っていい?」とメールした。離婚後、長男を連れて実家に戻った。
「震災の年です。実家に戻ったら、両親にとことん離婚を責められました。“ここはお兄ちゃんの家、あんたは置いておけない”“やり直せ”“夫婦は一生添い遂げるもの”って。
この家から子どもを小学校に通わせたいって土下座して頼んだけど、結局、ひたすら罵られて追いだされました。子どもは養護施設に預かってもらいました。そのとき心が完全に壊れた。毎日、起きると涙。布団に入ると涙、みたいな」
さらに解離性障害と診断されて、働くことにドクターストップがかかった。
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