34歳で1200万円を得た小説家志望の男の生き様

20代をダラダラし続けた倉井眉介さん

僕って何気に強運なので、就職活動をしたらタイミングよく求人が見つかって、そのまま入社が決まりました。すごくラッキーでしたね。今も続けてるんですが、ガスを扱う会社で、ガスを容器に詰めて出荷する仕事をしています。そこで初めての会社員生活をスタートさせました。

就職したのは2018年の4月でしたが、まだ小説家の夢は諦めていませんでした。今まで中途半端に仕上げていた小説を、しっかりと推敲して、納得した状態で作品を完成させよう。今まで受けた小説に関する周りのアドバイスなんかもしっかり振り返って、作品に真剣に向き合いました。

そしてちょうどその年の5月31日が締切りの『このミス!』大賞に応募したんです。それが、今回大賞を受賞することになった『怪物の木こり』。あんなに時間があったときはできなかったことなのに、会社員として規則正しく働くようになってから締切りが守れるようになりました(笑)。自分が心を入れ替えた後の作品は、選考員の方にもしっかり評価してもらえて、今回の受賞に繋がった。

きちんと推敲する、人のアドバイスを聞く、締切りまでに終わらせる……「基本的なことをちゃんとやる」ことって大事なんだな、と身を持って学びましたね。

家族にもすごく喜ばれたし、受賞してからは職場で「先生」ってあだ名を付けられました。大賞賞金の1200万円がいきなり入ることになって、お金がいっぱいあるとも思われています(笑)。お金に関しては正直、使い道もないんですけどね。もともと月10万円あれば余裕で生活できてたので……。それよりも、これからやっと本格的な作家人生をスタートできることがうれしいです。

30代でも逆転ホームランは打てる。

若かりし僕の理想では、34歳ではとっくに「売れっ子作家」の仲間入りをしていて、「自転車で旅をしながら小説を書く」という悠々自適な生活をしているはずでした。

でもまぁ、回り道はしてしまったけれど、僕の20代に後悔はありません。なんだかんだで、望んだ道を歩んでいることはできているので。あの頃の自分には「ペンだこができるくらいにもっとたくさん書いておけよ」とは言いたいですけどね(笑)。

一つ、後悔しない人生を送るために、僕なりに意識していることがあります。それは「他人と自分を比較しない」こと。

『怪物の木こり』(宝島社)。書影をクリックすると宝島社のサイトにジャンプします

僕は小説に関することなら、周りの意見は素直に聞き入れますが、自分の人生に関することは、口出しされても深刻には受け止めません。親からも何度も「ちゃんとしろ」と言われてきましたけど、普通に生きたって結局、不幸になるときはなりますし。

自分の理想に妥協して、しんどい仕事に就いてしまったら、きつい人生を生きることになりますよね。それってすごい不幸だし、それなら自分が信じることをやってみた方がいいと思うんです。だから20代のうちは、周りの評価なんて気にせず、自分の道を信じた方がいい。

ただし、その道に自信がないなら、さっさと辞めたほうがいいです。どう考えても危険なので。僕だって、もし今回大賞を獲ることができていなかったら、「20代は親のスネをかじり倒した34歳のやばい奴」のままですから(笑)。でも僕には作家になる自信があったから、ここまでやってこれたんです。30代だって「逆転満塁ホームラン」は打てる。そのために自分の20代を「賭けてみる」のもありってことです。

(取材・文:青野祐治/企画・編集・撮影:大室倫子)

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