34歳で1200万円を得た小説家志望の男の生き様

20代をダラダラし続けた倉井眉介さん

『このミステリーがすごい!』大賞を受賞した倉井眉介さん。今はガスを扱う会社で働いているというが、この日は“いつもの作業着”で取材に来てくれた(写真:大室倫子)

20代から華々しい活躍を遂げる人がいる。一方で、なかなか芽が出ず30代になり、一気に才能が開花する「遅咲き組」もいる。最近まさにその“遅咲き”を叶えたのが、34歳にして新著『怪物の木こり』で、『このミステリーがすごい!(このミス!)』大賞を受賞した倉井眉介さんだ。

21歳で作家を志した倉井さんは、大学を卒業した後、コンビニでアルバイトをしたり無職になったりと、お世辞にも”立派な社会人”とは言えない生活を送る。そして、34歳で初めての就職をした矢先に『このミス!』大賞を受賞した。

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宝島社が主催する『このミス!』大賞といえば、『チーム・バチスタの栄光』シリーズの海堂尊さんを筆頭に多くのベストセラー作家を輩出してきた、名誉あるエンタメ文学賞。その賞金はなんと1200万円というから驚きだ。

まさにドラマのような逆転劇を経験することになった倉井さんの、「小説家になりたいくせに、書かずにずっとダラダラしていた20代」にクローズアップしてみよう。

社長にはなれない。だったら、小説家になろう

僕が本を好きになったきっかけは、大学の図書館にあったホラー小説の『黒い家』(角川/貴志祐介著)を読んだこと。それまでは、ほとんど本を読んだことがありませんでしたが、映画が面白かったので原作を手に取ってみたんです。

それからミステリー小説が好きになって、いろいろと読み漁るようになりました。でも300冊を超えたくらいで、自分が読みたいと思う本がなくなってきて。「この本はこういう話の方が面白いんじゃないか」とか「こんな話の本があればいいのに」と、自分の頭の中で物語を空想するようになりました。そのときに、自分が作家になることを意識し始めたんです。

でも大学4年生になると周りが就職活動を始めたので、僕も同じように普通のレールに乗っとくか、と思って就活をスタート。何社か選考を進めていたんですけど、あまり上手くいきませんでした。面接を受けてると「何か違うな」って、ずっと違和感があったんです。

しばらくしてその違和感の正体に気付きました。それは「こんな小さなことで苦労してるくらいでは、自分は社長になれないな」ということ。昔読んだ『銀と金』(双葉社/福本伸行著)という漫画に「人生、金を掴まなきゃ嘘だ」という台詞があるんですけど、それに影響を受けて「金を稼ぐなら、社長になるしかない」と密かに思っていたんです。でも多分僕は、会社に入っても社長にはなれない。それなら就職活動なんて意味がないなと思い、「普通の生き方」は諦めました。

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