「風通し」がいい会社と悪い会社の根本的な差 「うちは風通しがいい」という会社ほど程遠い

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風通しのよい会社かどうか判断する質問の「④組織に所属する人たちがお互いのことを本当の意味でよく知っていますか」が、問うているのは、毎日言葉を交わすとか、付き合いが長いといった表面的な関係性のことではありません。

その人がどんな生い立ちで、何を目指してこの会社に入ってきて、何をしようとしているのか。将来は、どんな夢を持ち、そのためにどんなことを学び、努力をし続けているのか。今、彼(彼女)にはどんなトピックスがあり、それに対してどんな気持ちを持っているのか――こういう奥の深いところまで理解して初めて、「よく知っている」と言える。そう私は考えています。

重要なのは皆の話を聞くこと

近年、そういう個人の事情について聞くことが困難になっているのは事実です。立ち入ったことを聞くと、たとえ善意でもハラスメントだと受け取られかねません。そんなこともあり、職場における人間関係の希薄化が進んでいます。

私からすれば、こうした状況を放置していることが、「場当たり的」組織運営だと言わざるをえません。放っておけば、今後ますますこの傾向は強まっていくでしょう。

しかし、それでは仕事上いいパスが出し合えるとは思えません。

「彼ならこのことに興味があるはずだから彼にやらせてみよう」「彼はあの件で今は手がいっぱいに違いないので、頼むのははばかれる」「彼女は今までこんなことに頑張ってきて得意だ」などなど。

その人の経歴、実績、性格などがわかっていて、初めていいパスが出せるのです。少なくとも上司の立場にいる人は、こうした個々の事情を把握するために、全員に取材をさせてもらうくらいの努力はしてもらいたいものです。

「そのへんは、部会で飲みに行くという形でやっています。若い人も意外と飲み会を嫌がらなくて仲良くやっていますよ」

そう言う方もいることでしょう。もちろんそうした親睦会的なコミュニケーションの効用は否定しません。ただし、冷静に実態を見た場合に、上司が言いたいことを言って、気分をよくするだけの飲み会になっていないかは気をつけたほうがいいでしょう。飲み会をセットしただけで関係性の構築、向上につながると安易に考えてはいないでしょうか。

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もしも飲み会の開催そのものが何らかの決め手になると考えているのならば、考えを改めてみてはいかがでしょうか。少なくとも上司としては飲み会に当たって、それぞれの部下に話を事前に聞いたうえで、飲み会の場で誰に何を話してもらえばいいかといったことまで周到に準備するくらいの工夫は必要です。

家であれば、窓を開ければ風は通ることでしょう。しかし、職場など組織における「風通しのよさ」は、成り行きまかせにしていて自然につくれるものではありません。組織を構成する人全員、とりわけ上に立つ人たちが努力をし続けてこそ成立するのです。

歓送迎会などが多いこの季節、飲み会に出席する部長さんたちは、「無礼講だ」などと浮かれて、言いたいことを言って悦に入るのではなく、皆の話を聞くことを心がけていただきたいと思います。

北澤 孝太郎 レジェンダ・コーポレーション取締役/東京工業大学特任教授
きたざわ こうたろう / Kotaro Kitazawa

1962年京都市生まれ。1985年神戸大学経営学部卒業後、株式会社リクルート入社。2005年日本テレコム(現ソフトバンクテレコム)に転身。執行役員法人営業本部長、音声事業本部長などを歴任。2015年4月より、兼任で東京工業大学 大学院理工学研究科の特任教授として、MBA科目の「営業戦略・組織」を担当。著作に、ベストセラーとなった『営業部はバカなのか』(新潮新書)やMBAクラス教科書の『優れた営業リーダーの教科書』(東洋経済新報社)などがある。

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