サスペンスだけではない「水谷豊監督」の最新作 日本映画で初めて「ドルビーシネマ」を採用

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また、本作は日本映画初となる「ドルビーシネマ」対応作品となっている。ドルビー社が提唱する「ドルビーシネマ」とは、広色域で鮮明な色彩と幅広いコントラストを表現する最先端映像技術「ドルビービジョン」、観客の周囲を包み込むような立体音響技術「ドルビーアトモス」の2つにインテリアカラー、空間デザイン、座席アレンジメントといったシアターデザインを組み合わせることによって、極上の観賞空間を提供するシアターシステムのこと。

被害者の両親役は水谷豊(左)と、檀ふみ(右)が演じる  ©2019映画「轢き逃げ」製作委員会

『ボヘミアン・ラプソディ』『アリー/ スター誕生』『ROMA/ローマ』など、本年度アカデミー賞ノミネート作品のほぼ全作品に採用されている最新技術で、ハリウッドで活躍するクリエーターたちの評価は高い。現在日本ではT・ジョイ博多に導入されているが、MOVIXさいたまにも4月26日に導入される予定だ。

このハリウッドクオリティの映像システムを導入した理由について水谷監督は「以前、会田撮影監督から見せてもらった最新鋭の映像のことが頭から離れず、『いつか日本でも』という思いを持っていました。その思いをかなえてくれるドルビーシネマに幸運にも出会い、この作品が日本映画初となることをうれしく思います。

日本映画でもドルビーアトモスが導入されはじめ、本作のドルビービジョン採用から、ドルビーシネマの可能性を取り入れることで、日本映画の映像表現や未来が変わっていくと思います。観客も、より集中できる環境で映画を楽しめるようになれば、感じ方がより複雑になり、生々しく心に響くのではないでしょうか」と期待を寄せる。

邦画初のドルビーシネマ採用作品

撮影の会田正裕氏は「ドルビービジョンは、肉眼で見るイメージの明るさなので、観客も、本物を見ているような感覚で、映画を観ることになる。3Dとは違って、今まで描き切れなかった深い暗部の表現をはじめ、作品世界に潜在的な幅を持たせることができるので、日常的な出来事を描いた本作には、非常にマッチしていると思います」とコメント。

さらに録音の舛森強氏も「ドルビーアトモスは上からも音が鳴るので、高さを含む三次元的な空間を、観客に意識させることができる。イタリアンレストランのシーンで、秀一の倒錯した世界を表現するうえでも、アトモスは大変有効でした。ワイングラスで乾杯してから、無音になり、婚約者の声が遠のいていく中に嫌な音を入れて、グラスの割れる音で現実に引き戻されるまでを、ぐるぐると音を回しながらドラマチックに表現できました」とそのメリットを強調する。

水谷監督の俳優デビューは1968年。それから50年以上にわたり第一線で活躍してきた。『傷だらけの天使』『熱中時代』『相棒』など、その時代ごとに違った役柄に挑み、絶大なる支持を集めてきた。そして今は監督という肩書きも加わる。今後、彼がどのように進化していくのか、注目したい。

(文中一部敬称略)

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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