注目高まる武蔵野線、潜在力をどう引き出すか 外環道のように都心を通らない特性を活かせ

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地元自治体などからは「武蔵野南線」の旅客化要望もあったが、貨物列車の本数が多く旅客列車運行の余地がなく、工事期間が長期におよび工事費も多額となることや、地下深いトンネルでは適切な駅間での途中駅の設置が困難であるなどの課題が明らかとなった。そのような中でJR東日本および日本貨物鉄道(JR貨物)が、旅客化は困難との見解を示したことから、2000年の運輸政策審議会答申第18号では、旅客化構想から除外されている(川崎市ホームページ「よくある質問(FAQ)地下鉄の代替案としてJR武蔵野南線を活用できないのか?」より)。

「武蔵野南線」の旅客化は遠のいたが、府中本町駅―西船橋駅間の旅客営業区間は平成時代に大きな変化を遂げることになる。

昭和時代が終わる直前の1988年12月1日に西船橋駅を介して京葉線との直通運転が始まった。さらに、1990年3月10日には京葉線の東京駅延伸開業に伴い同駅発着の武蔵野線直通列車が運行を開始し、さらなる利便性向上が図られている。なお、京葉線との直通運転は、武蔵野線沿線と東京ディズニーリゾートの間のアクセス利便性向上に貢献していることも特筆すべきことである。

沿線では大型商業施設が相次いで開設されたことにより、買い物利用も増えた。中でも、越谷レイクタウン駅は、駅直結のショッピングモールを含む越谷レイクタウンの街開きに応じて開設され、通勤・通学のほか、これら商業施設への買い物などに利用されている。

通勤・通学の輸送以外に活躍

加えて、スポーツスタジアムや公営ギャンブル場も沿線に立地し、日常利用しない人たちの武蔵野線利用を促している。日本中央競馬会(JRA)の2つの競馬場(東京競馬場・中山競馬場)を直接結ぶ鉄道路線であることは、競馬ファンの間ではよく知られている。

また、プロ野球・埼玉西武ライオンズのメットライフドームや、Jリーグ浦和レッズの埼玉スタジアム2020などへ向かう観客も武蔵野線を利用している。さらには、沿線に点在する獨協医科大学埼玉医療センター(埼玉県越谷市)などの複数の大病院への通院手段としても広く利用されている。

武蔵野線は、当初主に想定されていた貨物輸送と通勤・通学輸送の枠を大きく超えて、医療機関への通院輸送、大型商業施設への買い物輸送、レジャー施設やスポーツスタジアムなどへの行楽・観客輸送、そして隣県観光地への観光輸送など多彩な役割を担うようになった。

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