注目高まる武蔵野線、潜在力をどう引き出すか 外環道のように都心を通らない特性を活かせ

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第3点は、都内の他路線への旅客流入抑制と、武蔵野線の利用促進の両方を実現するうえで、貨物輸送のみならず旅客輸送でも都心を経由せずに、東京の外縁部を移動できる特性を最大限に生かした方策を企画し実行に移すことである。

東京隣県間の移動時間の短縮や都内への交通流入抑制の機能を担っている武蔵野線以外の交通網として、例えば東京外かく環状道路(外環道)がある。外環道は既存道路と有機的に接続するなど利便性を向上させることで、期待された機能を発揮している。武蔵野線のさらなる発展を実現するうえで、外環道から学ぶべきことは多い。

具体的には、東北・上越新幹線への乗り換えを東京駅・上野駅から大宮駅へと誘導することを目指し、同駅発着の「むさしの号」「しもうさ号」の増便を検討したい。

また、新秋津駅―西武池袋線秋津駅間の乗換経路の改善など他鉄道路線との接続利便性向上や、北朝霞駅(武蔵野線)・朝霞台駅(東武東上線)など、事実上の同一駅であるにもかかわらず鉄道会社間で異なる駅名を統一し、乗換駅としての認知度向上を図ることも有効と考えられる。

さらなる積極策により乗車人員数を伸ばせる余地は依然として大きいと筆者は考える。実際、「東京メガループ」各線の2017年度1日当たり平均通過数量を見ると、京葉線17万7849人、南武線立川駅―川崎駅間20万5221人、横浜線23万1016人に対して、武蔵野線は11万4143人にとどまる。

しかし、国鉄分割民営化初年度の1987年度(4万7090人)と比べて242%と大きく増加したことが武蔵野線のポテンシャルを示す。これまでは列車本数増発や新駅設置、京葉線との直通運転などの利便性向上がさらなる乗車人員増を導く好循環を生みだしてきた。今後もさらなる積極策で発展を図ることができるはずだ。

JR東日本などの取り組みに注目

本記事を結ぶにあたり強調したいのが、JR東日本やステークホルダーの協働の重要性だ。

今後の取り組みについて、JR東日本千葉支社は「E231系MU2編成への全線40周年! 記念ヘッドマーク取り付けは現場社員の発案により具現化した。今後は、期間限定で同編成の先頭車にラインカラーを模した吊り手とフリースペース部の窓ガラスへのステッカー貼付を行うことを予定している」と説明する。

さらに「タブレット端末導入による異常時多言語案内放送の試行のため、同編成において放送装置へのタブレット中継器の取り付けを実施する」(同支社)という。

また、新松戸駅―新八柱駅間では、松戸市が新駅設置希望し、JRとの交渉を要望する。

路線価値向上を含む武蔵野線のポテンシャル拡大に向けたJR東日本とステークホルダーによる協働と取り組みの本気度が問われている。

大塚 良治 江戸川大学准教授

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おおつか りょうじ / Ryouji Ohtsuka

1974年生まれ。博士(経営学)。総合旅行業務取扱管理者試験、運行管理者試験(旅客)(貨物)、インバウンド実務主任者認定試験合格。広島国際大学講師等を経て現職。明治大学兼任講師、および東京成徳大学非常勤講師を兼務。特定非営利活動法人四日市の交通と街づくりを考える会創設メンバーとして、近鉄(現・四日市あすなろう鉄道)内部・ 八王子線の存続案の策定と行政への意見書提出を経験し、現在は専務理事。著書に『「通勤ライナー」 はなぜ乗客にも鉄道会社にも得なのか』(東京堂出版)。

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