どん底、JR貨物を再生に導いた「運命の2日間」 海運、空運のプロは経営再建請負人だった

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日本貨物航空でも同じように各極に分けて収支管理をやったが、アジアとヨーロッパを結ぶ便のように日本発着ではない国際線もある。そうなると日本からあれこれ言ってもどうにもならず、現地同士で頑張るしかない。でも、その結果、現地同士の絆はものすごく強くなった。また、当時は古い機材ばかりだったので燃費が悪かった。新しい機材に切り替えることで投資効果が出てきた。こうしたことを通じて万年赤字から黒字に転換できた。

――病院経営でも収支を改善しました。

私が勤務した病院には日本トップレベルの医師や研究者が500人もいた。看護士やそのほかの職員も献身的に働く。患者さんは列を成していた。

――それなのに赤字。これもマネジメントの問題ですね。どのように黒字化したのですか。

私は、医療はずぶの素人だから「ああしろ、こうしろ」とは言わなかった。やったことは先生方や看護士さんたちに収支を見せたことだけ。でも、みんなおそらく初めて見たのだと思う。収支を見て目の色が変わった。先生方、看護士さん、事務職、みんなを集めて合宿した。そうするとみんないろいろなことを言い出した。先生方も気づくことがたくさんあった。それが改善活動に変わり、収支が改善された。先生や看護士さんの給料は上がり、最新の医療機器もどんどん導入した。

官民協力で鉄道インフラ強化を

――日本郵船、日本貨物航空、がん研、どの経験もJR貨物につながる話ですね。ところで、石田さんをJR貨物に招いたのは誰ですか?

それはちょっと言えませんが、国の要請です。

――国側も社員自らに気づいてもらうような経営改革を期待していたのですか?

どうでしょうね。私は今お話ししたようなことはご存じないと思う。

――では、海運や空運での経験をJR貨物で活かしてほしいという前提だった?

そういうことです。でも、私が「ああしろ、こうしろ」と言っても意味がない。社員自身に気づいてもらうから価値がある。

――最後に、JR貨物が抱えている課題について教えてください。

2018年の豪雨で一部区間が不通となった山陽本線を迂回して走った貨物列車(写真:JR貨物)

JR貨物は鉄道輸送の業績が改善し、不動産事業も堂々たるものだから、100億円を超える経常利益をこれから出していけると思うが、1つだけ前提条件がある。それは、鉄道輸送はレールというインフラがあってこそということだ。昨年の豪雨で山陽線が長期にわたって止まってしまった。レールがないとわれわれは働きようがない。

道路や空港、河川は何かあると国や自治体がすぐに直してくれるし、トラブルを未然に防ぐような整備もしてくれる。それと同じように鉄道のインフラ整備も必要だ。問題が起きそうな危険箇所はわかっているのだから、優先順位を付けてできるところからぜひ整備をお願いしたい。われわれも努力をするからぜひ官民協力で。3~5年続ければ日本のインフラ基盤が本当に強化される。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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