どん底、JR貨物を再生に導いた「運命の2日間」 海運、空運のプロは経営再建請負人だった

拡大
縮小
2013年の会長就任後、最初に取り組んだのは「意識改革」だったというJR貨物の石田忠正相談役(撮影:吉濱篤志)

その意味で、JR貨物に来て最初にやったことは2日間の役員合宿。社長以下、役員全員、部長、支社長も集まった。私は「ああしろ、こうしろ」とはいっさい言わなかった。「自由闊達」「役職は無関係」「何を言ってもよい」といったルールだけ決め、参加者の間でガンガン議論を行い、JR貨物の現状と問題点を洗い出し、解決策を考えてもらった。

JR貨物をどういう会社にしたいのか、そのためには何をすべきかを1つの表にまとめたら、ちゃんと形になって、全員が「できる」と思った。翌週の経営会議からガラリと変わりましたよ。また、各支社長は支社ごとに合宿をやって、現場長たちも職場で部下たちと議論をした。こうなると本物だ。

減らしていた営業マンを増員

――JR貨物が変わったのは、2日間の合宿だったということですね。では、鉄道黒字化に向け、どんな行動をしたのですか?

例を一つあげると、今までは赤字を減らすために営業部の人員を減らしてきたが、そうすると売り上げがさらに減るという悪循環になる。そこで、最初にやったのが営業マンを増やすこと。今まではお客様(荷主)への営業はトラック会社(通運事業者)に丸投げして、自分たちではほとんどしていなかった。これを改めて、自らお客様の所に営業をしに行くようにした。

――集荷して配達する両端の部分はトラックですが、間に鉄道を入れてくださいと荷主にお願いするのですか?

そう。われわれが新たな顧客を見つけてくると、両端の通運業者も喜んでくれる。ただし、単にコンテナを積めばいいというものでもない。列車の収支は「往復」で見る。片道のコンテナの稼働率が100%でも、逆方向がカラだったら稼働率は50%にしかならない。その空コンテナにも運転士の費用、電力費、線路使用料などのコストがかかるので、稼働率50%では食べていけない。

だから、今は「ラウンド収支」をどうやって改善できるかを考えるようにしている。空コンテナの回送率は、毎年ものすごい勢いで下がっていますよ。

次ページ提案営業でビール4社の共同輸送を実現
関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT