万引きを6年ほぼ毎日続けた33歳女が陥った病 万引きが原因で離婚、それでもやめられず

拡大
縮小

結婚から2年が経った頃に最初の子どもが生まれる。夫が転勤族だったことから、彼女は誰も知り合いのいない環境で子育てをすることになった。平日は深夜まで働き、週末は平日の疲れをとるべく泥のように眠る夫。子育てに関して何のサポートも受けられず、ストレスを発散できる場もなかった。

近所付き合いでママ友が少しずつできたものの、今度はママ友と自分とを比較するようになった。ママ友の多くが働きながら子育てをしており、自分よりも生き生きしているように見えた。「私は何やっているんだろう?」と自問するうちに、自己肯定感は少しずつ下降していったという。

そうした日常を送る中で、彼女は知らず知らずのうちに「非日常」を求めるようになる。気づくと、普段買い物に行っていたスーパーに陳列されていたビスケットをベビーカーの中に入れていた。その行為は、彼女にとって快感だった。

「正直なところ、楽しくて楽しくて、こんな楽しいことは誰にも教えたくないし、誰にも止められたくないと思っていました」と彼女は言う。万引きは彼女にとっての「ご褒美」だった。

私、常に怒っていたんです

「誰も私を甘やかしてくれないし、甘えさせてくれない。ならば、自分で自分にご褒美をあげるしかない。今日一日頑張ったご褒美として、スイーツを買ったり、美味しいものを食べたり、マッサージをしたりするじゃないか。それが私にとっては万引きだったんです。毎日スーパーをはしごして、何軒も何軒も、何回も何回もやっていました」

一体何が彼女を万引きに駆り立てていたのか。改めて聞くと、「……怒り、なのかもしれません」と彼女は答えた。

「それが夫に向けてのものだったのかはわからないんですが、私、常に怒っていたんです。夫のご飯をつくって、子ども2人の面倒を見て……。夫は妊娠中も体を求めてきて私はあなたの性のはけ口ではないと思っていたし、家政婦じゃない、飯炊き女じゃないとずっと思っていました」

そうして、ストレスというより「怒り」を発散させるように、彼女は万引きを繰り返した。止まらない万引きが原因となって離婚に至った後も、万引きは止まらず、むしろ加速していった。

その後、彼女は「クレプトマニア」という、通称万引き依存症だと診断された。

依存症の多くはストレスが引き金となる。彼女のストレス、あるいは怒りはなぜ他でもない「万引き」による解消へと向かっていったのか。

彼女をはじめ、クレプトマニアとされる人々がどのようにして万引きを重ねるようになるのかについて、リディラバジャーナル「万引き依存症」特集をご覧ください。

リディラバジャーナルの関連記事
万引き依存症は「家族の問題」なのか
常習的な万引き、「依存症」との境界線
彼女が「万引き依存症」になった理由

「リディラバジャーナル」編集部

「リディラバジャーナル」は社会問題の現場を訪れるスタディツアーを提供しているリディラバが2018年1月に立ち上げたウェブメディア。社会問題を見続けてきたリディラバの知見をもとに、問題の背景にある社会構造まで踏み込んだ、特集形式で記事を提供する有料メディアです。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
TSMC、NVIDIAの追い風受ける日本企業と国策ラピダスの行方
TSMC、NVIDIAの追い風受ける日本企業と国策ラピダスの行方
【動物研究家】パンク町田に密着し、知られざる一面に迫る
【動物研究家】パンク町田に密着し、知られざる一面に迫る
広告収入減に株主の圧力増大、テレビ局が直面する生存競争
広告収入減に株主の圧力増大、テレビ局が直面する生存競争
現実味が増す「トランプ再選」、政策や外交に起こりうる変化
現実味が増す「トランプ再選」、政策や外交に起こりうる変化
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT