東大カリスマ教授の「超ハック術」 塩野誠×松尾豊 特別対談(上)

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最初の印象は、「大したことない」

塩野:それで、スタンフォードに行かれたのですね。やっぱり最初は苦労されました? 語学とか、研究室の雰囲気とか。

松尾:最初に、いろいろな先生と話したのですけれど、最初の印象は「たいしたことないな」と思いました。ぼくがやっている研究に関して言うと、「ああ、そうだね」って言うだけで。聞いてみてもあまり詳しくないし。まあこんなものかなあと思っていました。

ただ、だんだんわかってきたのが、しゃべって人を驚かすとか、賢さで人と勝負するというのは日本特有なのだということ。向こうはスタミナの世界なのですよね。同じことを何十年もずっとやり続けて、そのうえで膨大な知識を蓄積したり教科書を書き換えたりすること自体が競争力になっている。一瞬一瞬はどっちでもよくて、積み上げるのが大事だという意識がすごく強い。

塩野:一般的な日本人の意識だと、アメリカでは、突然、スターが現れて、積み上げは日本人がやればいい、という印象が強い気がします。それでもアメリカは巨人の肩に乗る感じの積み上げなのですね。

松尾:非常に積み上げ型ですね。話していて、「こいつわかっているな」「こいつ賢いな」みたいなことは、そうとう文脈が共有されてないといけない。ほかの研究者とも話して、ポスドクレベルだと、僕のやっていることは大体わかってくれない。そのときに、やっぱり業績がないと無理なのですよね。こういういい国際会議に、こういういい論文書いていますというのを、客観的事実として見せないといけない。「中身がいいです」というのは文脈依存なので、伝わらない。

塩野:トラックレコード(実績)、ファクト(事実)を見せないといけないわけですね。

松尾:そうです。そこが次に難しいなあと。トラックレコードを作るというのはそうとう難しい。

そこから論文を書くことを一生懸命やり始めました。2年間で、アホみたいな量の論文を国際会議に通して、いろいろ方法論のハックがありました。そうすると今度わかってきたのは、いい国際会議に論文を通すというのは、国際コミュニティの共通の問題意識の上に、少しだけソリューションを提供するっていうことなのだと。

そうすると、本当に先進の部分はなかなかできない。多くの人が問題だと思っていることにアドレスしないといけないので。だから、絶対にレベルを落として書かないといけない。

塩野:なるほど。巨人の肩に乗るときに、あえてレベルを落とす。

松尾:ゆっくり待ちながら書いていく感じですね。それで、論文を通していくとなると、やはりレベルが低いなと。そういうことを考えました。最初はレベルが低い、次はレベルが高い、でもやはり最後はレベルが低いなっていう感じですね。

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