iPhoneが日本に与える経済効果が変化するワケ アップル日本法人の直接雇用は38%増に

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一方で、村田製作所やミネベアミツミのような、伝統的な日本のモノづくり文化に根差したサプライヤーは強い。

もっとも、製品の技術トレンドが大きく影響する「アップル経済圏」は移ろいやすいものだ。今後も決算ごと、あるいはアップルが新製品を発表するごとに一喜一憂があるだろう。

しかし一方で、アップルの直接雇用者数、iPhone/iPad向けアプリ経済圏の雇用者数は確実に増加している。

2010年に956人だったアップル日本法人の雇用者は、2018年に4000人を超えた。2016年が2900人だったことを考えれば、実に38%増加したことになる。中でもコールセンターの人員は1441人を数えるという。

言うまでもないことだろうが、このことはアップルが“ハードウェアメーカー”であることを如実に表している。部品調達が日本の製造業にも大きなキャッシュフローをもたらしているように、ハードウェアの販売は流通や保守に携わる雇用を生み出す。

日本にあるアップルストアの8店舗は変化していないが、再出店などによって店舗規模は以前よりも拡大している。アップルのブランド戦略強化の流れや、日本における端末の販売方法(サービスと端末価格の完全分離という流れ)を考えれば、今後はさらにアップルストアの増加、サービス部門強化による雇用者数増加が続いていくと予想される。

アップルがサービス事業に力を入れている点もプラス要因だろう。音楽配信が代表的な例だが、今後、ニュースや雑誌、あるいは映像などのコンテンツ配信をアップルが手がけていくのであれば、それぞれのジャンルごとに各国向けの“カルチャライズ”が必要になると考えられるからだ。

しかし、最も伸びているのは、AppStoreを経由した売り上げと雇用だ。

伸び続けている「AppStore」の売り上げ

AppStoreが開始された2008年7月から2016年8月までの間に日本を拠点とするデベロッパーに支払われた収益は96億ドルだったが、2019年2月の時点では240億ドルを超えた。すなわち2年半の間に144億ドルが日本のデベロッパーに還元されたことになる。

アップルは1月の起業家養成キャンプ「Entrepreneur Camp」において、グローバルでのAppStore収益が累計1200億ドルに達したと発表している。正確な比較はできないが、AppStoreを通じて日本のデベロッパーに還元された収益は全体の20%に上ることになる。この2割という数字は2016年当時も同様だった。

2016年6月のWWDC(開発者向け会議)でAppStore収益が累計500億ドルと発表されており、この2年半での売り上げは約700億ドル。日本のデベロッパーに支払われた額とされる数字と照らし合わせると、今後の成長がAppStore、あるいはiPhone/iPad向けのサービス事業により大きな可能性があることは間違いない。

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