株価は「過度の楽観」で今後さらに深刻になる 実態以上に戻り過ぎた「代償」を払う時が来る

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ところが足元の株価の戻りが大きくなって、たとえば3上昇してしまうと、1だけの戻りを予想して空売りや先物の売りを行なっていた投資家が、上に担ぎ上げられて、追い証を求められ、買い戻しを余儀なくされる。

このため、短期的な株価上振れがさらに大きくなり、株価が4や5戻る展開になる。すると、株価が上昇したことで突然強気になり、4や5の戻りが進んだ後で、大きく株式の買いを進める向きも出るだろう。そこから7株価が下がれば、差引2の下落となり、前述のケースと同様、実体経済の悪化の程度に見合った下落になるはずだが、高値で買いこんだ向きが大いに損失を被って、投げ売りに走るかもしれない。すると下げは7で止まらず、10株価が下がる、ということが起こるだろう。つまり差し引きの株価下落が、大きなものになってしまう。

このように、売った向きがまず大きく担ぎ上げられて損失を被り、売り方の損切の買い戻しが一巡した後、今度は買った向きが大きく叩き込まれて損失を被る、という激しい展開がすでに始まりかかっているし、さらに進んでしまうという点を、まさに「懸念」しているわけだ。

世界経済・企業収益実態の悪化は一段と進んでいる

こうした筆者の心配は、大半の読者の方にとっては、全く余計なことだろう。そこでこの話はここでやめて、経済や企業収益の実態面に話題を移したい。

実態は、どんどん悪くなっている。これまでも、昨年12月分のアメリカの小売売上高や、今年1月分の日本の輸出額など、世界経済の悪化を示唆するデータが多く発表されてきた。先週公表分だけでも、たとえば12月分のアメリカの住宅着工件数が前月比で11.2%も減少した。また2月分のISM製造業景況感指数は、1月の56.6から55.5に悪化すると予想されていたところ、54.2まで下振れした。

日本では、2月の消費者態度指数(消費者心理を表す)は41.5と、1月の41.9から悪化した。2017年11月、12月、および2018年1月の44.6のピークからの悪化傾向が、いまだに止まらない。このまま消費税率引き上げに突入すれば、結果は明らかだろう。日米の企業収益見通しを、アナリストの平均値でみると、予想の下方修正が進む一方だ。

ところがこうした実態悪を、足元の市場は全く無視している。それどころか、たとえば2月28日に発表された、アメリカの10~12月期の実質経済成長率(前期比年率ベース)は、7~9月期の3.4%から、2.6%に減速した。ところが米ドル円相場は、市場予想(2.2%)より良かったともてはやし、米ドル高・円安が進んで、日本の株価を押し上げる展開となっている。

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