株価は「過度の楽観」で今後さらに深刻になる 実態以上に戻り過ぎた「代償」を払う時が来る
このため一時トランプ大統領は「3月1日の関税引き上げ期限より前に米中首脳会談を行なう」との意向を示していた。こうした大統領の体たらくは、当然中国側も察知し、「アメリカからLNGや大豆の輸入を増やすと言えば、あとは何もする必要はないだろう」となめきっていたように思われる。
これでは知的財産権の侵害や先端技術移転の強要といった、肝心の構造問題に何も手が付かなくなる。さすがにライトハイザー代表は孤軍奮闘し、3月1日より前の米中首脳会談を翻意させたようだし、中国政府の企業に対する補助金も含め、構造問題の改善を中国に迫っている模様だ。それでも、対中強硬派の分が悪そうな状況に見えた。
ところが、米朝首脳会談が突然決裂した。こちらも、北朝鮮がアメリカを甘く見て、少しの譲歩で経済制裁を大きく解除してもらおうとした模様だ。加えて、やはり外交面で強硬派のジョン・ボルトン大統領補佐官が、さっさと甘い形で交渉を進め、ノーベル平和賞でも狙おうというトランプ大統領の「ドナルド・ファースト」の姿勢を、諌めたとみられる。
これを米中間の交渉に投影すると、さすがにトランプ大統領が、アメリカの国益を軽視して、適当なところで対外交渉をまとめよう、という姿勢はまずいと思い始めたのではないだろうか。そうした姿勢転換の背景には、アメリカ国内で元顧問弁護士のマイケル・コーエン氏が下院で証言し、大統領の足元が揺らいでいるため、対外強硬姿勢を示して、支持者の心をつなぎとめなければいけないと、心変わりしたことがあると推察される。
日本にも弾は飛んでくる?
とすれば、今後の対中交渉では、ライトハイザー代表の声が優先される可能性がある。すると構造問題で譲りたくない中国との間で交渉が決裂し、市場のこれまでの期待が裏切られる展開がありうる。またライトハイザー代表は、3月中にも対日通商交渉を進めたいとの旨を表明しており、弾は中国だけではなく、日本にも飛んでくると覚悟すべきだ。
こうした諸要因を鍋に入れれば、やはり年央に向けての日経平均1万6000円シナリオが示現すると考えるべきだろう。そうした流れの中ではあるが、短期的な株価戻りがまだ続いてしまう可能性も踏まえて、今週の日経平均のレンジを2万1000~2万2000円で予想する。
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