本当は恐ろしい「収入合算」の住宅ローンの実態 「返済が苦しい」と相談に来る数はかなり多い

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Aさんが、[連帯保証型]で「収入合算」し、4000万円の住宅ローンを組むときは、債務者はAさん、妻が連帯保証人という形で借りることになります。これは、債務者であるAさんの返済が滞ったときには、連帯保証人である妻が残債の全額を肩代わりすることを意味しています。

もしも、返済に応じられなければ、最悪、家を手放したり自己破産したりする可能性があります。冷静に考えれば、妻の責任は決して軽くなく、とても怖い借り方なのです。

そのうえ、前回取り上げた「ペアローン」と比べると、同じ4000万円を夫婦2人で協力して返済することは同じなのにもかかわらず、「収入合算」の[連帯保証型]はさまざまな点で見劣りします。

デメリットとは?

まず、死亡時などにローン残債が保険金で完済される仕組みの団体信用生命保険(団信)に、債務者のAさんは入れますが、妻はあくまで連帯保証人にすぎないため、加入することはできません。

続いて、住宅ローン控除(1年目)は、27万5500円です。前回の「ペアローン」では2人合計39万1200円を受け取れることに比べ、約11.6万円も少ないのは残念ですね。この差が10年(消費税8%時)~13年(消費税10%時)も続くのは大きいです。

「4000万円のローンを組んだのだから、1%の40万円ほど受け取れるはずでは?」と思う人もいますね。住宅ローン控除は、年末残高の1%相当額を受け取れるイメージですが、納めた所得税・住民税以上の額は受け取れません。

Aさんは、どれだけ多く住宅ローンを借りても、対象になる所得税・住民税の合計27.55万円(=所得税13.9万円+住民税13.65万円)を超える額は受け取れないのです(詳細は前回記事をご参照ください)。こういう“もったいない”ケースは、「収入合算」の[連帯保証型]でありがちです。

さて、「すまい給付金」について見ると、消費税率8%時は0円、10%時の住宅取得であれば30万円受け取れます。けれども、前回見た「ペアローン」でなら夫婦合計で8%時11.2万円、10%時37.4万円を受け取れたことに比べると、歴然とした差があります。

こうして見てくると、「収入合算」の[連帯保証型]で借りると、リスクが高いのにもかかわらず、“もらえるお金”は少ないです。では、なぜ借りるのかというと、1人の収入では足りないときに、提案する側(銀行)も提案しやすく、提案された側(債務者)も借入可能額を気軽に手軽に増やせるからです。

そのせいでしょうか……「収入合算」夫婦の相談を受けていてよく感じるのは、覚悟の甘さ、です。例えば、「収入合算で借りていたものの、妻が育児に専念することになり仕事を辞めたため、借り換えで家計を楽にしたい」といった相談が後を絶ちません。

実態として返済できている今なら借り換えして返済額を軽くできるのでは、という考えはわかるのですが、夫の収入が従前より大幅に増えておらず、ローン返済が進んでいない状況では、金融機関は借り換えをまず引き受けてはくれません。もともと夫1人では審査が通らなかった金額を借りているわけですから、当然です。

また、「ペアローン」と同等以上のリスクを抱えていながら、働けなくなったときに備える保険(就業不能保障付き団信や就業不能保険、所得補償保険など)や、妻死亡時に備えた生命保険も、ほとんど手当てできていない「収入合算」夫婦を多く見かけます。

2人で返済していくなら、ずっと仕事を続ける心意気と必要な保険の手当てに、どうか余念なく。次回以降、もう1つの「収入合算」である[連帯債務型]を取り上げます。

竹下 さくら ファイナンシャルプランナー/宅地建物取引士

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たけした さくら / Sakura Takeshita

兵庫県神戸市生まれ。慶應義塾大学商学部にて保険学を専攻。損害保険会社の営業推進部および火災新種業務部、生命保険会社の引受診査部門の勤務を経てファイナンシャルプランナーとして独立。個人向けコンサルティングを主軸に講演・執筆を行う。『「奨学金」を借りる前にゼッタイ読んでおく本』(青春出版社)、『「家を買おうかな」と思ったときにまず読む本』(日本経済新聞出版社)など著書も多数。

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