マクドナルド新社長、「カサノバ超え」の試練 後任はJ&J日本法人トップを務めた日色氏
客数が大幅に落ちこんだ2015年、カサノバ社長は47都道府県の店を回って、顧客の声を直接聞くことに力を注いだ。同時に、アンケートに答えるとクーポンがもらえるアプリ「KODO(コド)」を導入し、提供スピードや店内の清潔さなどに対する顧客の意見を集め、店舗の実態把握に努めた。
こういったカサノバ社長の姿勢が経営立て直しに寄与したことを知る日色氏もまた、現場でのコミュニケーションを重視する。「現場にしっかり注意を向けて、(そこで気づいたことを)戦略に結びつけていくことが非常に重要」(日色氏)。
昨年9月、日本マクドナルドに上席執行役員として招聘された日色氏は、その時点で「社長就任を打診する可能性がある」とも伝えられていた。ただ、カサノバ社長が「彼が入社後の半年間、店舗で情熱的に働いていたことが印象に残っている」と語るように、日色氏はハンバーガー作りやカウンターでの注文受付など、アルバイトスタッフが行うような店舗での実務を精力的にこなした。また、その間も周りのスタッフや顧客と積極的にコミュニケーションを取ったという。
求められるバランス感覚
日色氏に期待されている2つ目の役割が、外資系企業の日本法人社長という立場に求められる、バランス感覚のあるリーダーシップだ。「グローバル企業の日本法人という特殊な立ち位置で、いかに日本のニーズをとらえながら本社の戦略とも合わせていくか。そこは微妙なさじ加減が必要」と、日色氏は説明する。
ジョンソン・エンド・ジョンソンでは営業担当者からスタートし、多くの部門を経験して社長になった。経営トップに就いてからは、アメリカの本社と折り合いをつけながら日本法人を導いた。このような経験を日本マクドナルドで生かすことができるかどうかが、今後問われることになる。
日本マクドナルドは成長を加速させるために、さまざまな施策を打ち出している。2015年から、注文と受け取りのそれぞれの作業に特化したスタッフを配置する「デュアルポイントサービス」を本格導入(全2899店の約7割に当たる2004店に導入、2018年末時点)。2016年からは、自動でメニューを変えられるデジタルメニューボードを本格的に設置した(全店舗の半数に当たる1498店に設置、同時点)。
2019年度には、これらの導入店舗数をさらに増やしていく。加えて、座席確保やメニュー内容を詳しく説明して商品選びをサポートする「ゲストエクスペリエンスリーダー」と呼ぶスタッフの設置を進める。また、客席まで商品を運ぶテーブルデリバリーや顧客が自分のスマホで注文できるモバイルオーダーも導入していく考えだ。
日本マクドナルドは昨年度(2018年1月~12月)、実に10年ぶりに出店数が退店数を上回り、店舗数が増加した。近年は新規出店よりも既存店の改装に経営資源を集中させてきたためだ。
今年度(2019年1月~12月)も、駅前や空港などを中心に10~20店の店舗数増加を見込むが、会社側は「店舗数の増加よりも、基本的には既存店をさらに伸ばすことで成長していきたい」と説明する。国内市場のみを相手にするため、店舗数の増加には限りがあるためだ。新社長の日色氏は、業績のV字回復を果たしたカサノバ氏以上の実績を残せるのだろうか。
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