生活困窮者を囲い込む「大規模無低」のカラクリ

生活保護受給者の「収容」はなぜ加速するのか

SSSは1998年に人権擁護などを掲げる政治団体「日本人権連合会」(NJR)(高橋信一代表)として発足。2000年に改称し、NPO法人に認証された。2012年から菱田氏が理事長に就任している。

無低最大手、NPO法人SSSのホームページ。「わたし達は、まず助けます。」のフレーズが目に飛び込む(編集部)

メディアへの露出は少なく、東洋経済の取材依頼に対しても、「取材については日頃から慎重に対応しており、今回の取材対応については控えさせていただきたい」(広報担当者)としている。政治家に対しても同様の対応だ。「議論にあたってその現状を知るために、最大手のSSSに施設の視察を依頼したが、にべもなく断られた」。民主党政権時代に無低に関する議連を立ち上げるなど、同問題に詳しい初鹿明博衆議院議員はそう振り返る。複数の地方議会議員も視察依頼を門前払いされたと話すなど、SSSの施設運営の内実やその経営実態についてはベールに包まれている。

6割弱が相部屋か簡易個室

SSSによれば、2018年10月末時点で、施設のうち完全個室は4割強にとどまる。残る6割弱が町田第二荘や葛西荘のような多人数居室(相部屋)、もしくは簡易個室だ。「耐火ボードで2つに分けた部屋は3畳程度。布団を敷くと足の踏み場もない。仕切りの板は背丈より少し高い程度なので、照明や生活音が気になってゆっくり眠ることはできなかった」。生活保護を受給しSSSの簡易個室で半年ほど暮らしていた、50代の男性は話す。

生活保護を受給しSSSの簡易個室で暮らしていた50代男性(記者撮影)

「エアコンは共有でリモコンはボードの向こうの相方の部屋にあったので、自分で操作できなかった。真夏の暑いさなかに相方が不在だった折は大変だった」と振り返る。施設の入居者はみな他人同士の中高年男性ばかりのため、「人間関係のトラブルが頻繁で、暴力沙汰のけんかも何度も目にした」という。住宅費と朝夕の食費、水光熱費などとして毎月10万円近く徴収され、支給される生活保護費は手元にほとんど残らなかったと話す。

無低の施設利用料は、本来低額のはずだが、実際は簡易個室であっても、それぞれ一部屋分の生活保護の住宅扶助基準の上限額が設定されている場合が多い。高額な食費が徴収されたり、不透明な名目の利用料が徴収されたりする場合もある。その結果、厚労省の調査によれば、86%の無低で本人の手元に残る生活保護費は3万円未満とされる。

昨年12月、無低の今後のあり方を議論する厚労省の検討会に、同省は簡易個室について「プライバシーが十分確保されているとは言いがたい」として、「段階的に解消を図っていく」「現存する簡易個室については一定の条件を付したうえで使用を認める経過措置を設けてはどうか」といった方向性を示した。

相部屋についても同様だ。一見、簡易個室の全廃に向けて舵を切ったようにも見えるが、福祉関係者からは「廃止時期の目安も示されないなど踏み込みが足りない。これではなんら具体性がない」と危惧する声が上がる。

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