生活困窮者を囲い込む「大規模無低」のカラクリ

生活保護受給者の「収容」はなぜ加速するのか

厚労省が規制強化に強く踏み込めない背景には、生活保護などの事務を取り扱う各自治体の福祉事務所と、SSSのような大規模無低事業者との間にある依存関係がうかがえる。

「福祉事務所は多忙なため、つい手間がかからない無低事業者に頼ってしまいがちだ」。元ケースワーカーの男性はそう語る。都市部では1人のケースワーカーの担当が100世帯を超えることもザラであり、アパート探しをはじめ丁寧な対応で困窮した当事者の生活の安定を担うことは容易ではない。

他方で、「生活保護の受給さえ決まれば、大規模無低なら送迎付きで引き受け、どこかの空き施設で受け入れてくれる。その後も自治体によってはトラブルがない限り入れっぱなしにしている」(同)。

厚労省の2015年時の調査によれば、本来は一時的な居所であるはずの無低に、入所期間4年以上に及ぶ入所者が全体の3分の1を占めている。千葉県による昨年5月の調査でも、無低における1年以上の入所者率は7割に上っている。「一度入所すると、無低事業者は生活保護費から毎月取りはぐれなく利用料を得られるし、行政は事業者に丸投げすることで細かなケースワークの手間が省ける。両者はウィンウィンの関係だ」(別の元ケースワーカーの男性)。

さいたま市福祉事務所の一部に置かれていたSSSなどへの入所を前提とするような面会記録票(記者撮影)

表だって行政側は「個別の無低を斡旋・紹介することはない」としているが、例えばSSSはホームページ上で「利用のきっかけ」というデータを公表しており、そこでは入所者の96%が役所からの紹介だとアピールしている。では福祉事務所側はどうか。各福祉事務所には来所した当事者からの相談内容を記録する面接記録票が置かれているが、さいたま市の福祉事務所の一部では、「SSSへの入所契約」を前提とするような記録票を作成、設置していたことが、昨年9月に明らかとなった。

入居者に選択の余地はほとんどない

こうした両者の「蜜月」の反面、生活保護受給者の選択権は著しく阻害されることになる。かつて大規模無低に入居していた50代男性は、福祉事務所で近隣の無低の一覧表を提示されたとき、以前と同じ団体の施設だけは避けたいと強く思っていた。

それは10年ほど前に都内のある団体の施設を利用した際、ワンフロアに二段ベッドがいくつも詰め込まれた相部屋に入れられ、プライバシーは自らのベッドの上だけという生活を余儀なくされていたためだ。

ところが、入りたいと思った施設にたまたま空きがなかったため、ケースワーカーから「ここを予約したから」と告げられて、以前と同じ団体の施設への入所を余儀なくされた。「部屋が簡易個室だということも、施設利用料がいくらかでさえも、実際に入所するまで知らなかった」

意に沿わない施設への入所を求められた結果だろうか、無低からの失踪者は少なくない。先の千葉県の現況調査によれば、無低からの退所者のうち、失踪が3割弱を占めている。

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