ベビーシッターこそ「生産性向上」の切り札だ 経沢香保子氏は「日本人の勝算」をこう読んだ

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なぜなら、早く進めないと、団塊ジュニア世代の女性の出産可能時期が終わってしまうと考えていたからです。団塊ジュニア以降の女性の数は、当然、団塊ジュニアの世代には届きません。つまりは団塊ジュニアの世代の女性の出産をサポートできないと、人口減少の歯止めをかける難易度が上がるのです。

「保育園を増やせばいい」という意見は、もちろんだと思います。しかし現実問題として、保育士不足や財源、建設地の問題などがあり、座して待っていられる時間はないのです。可及的速やかに実現できる、ベビーシッター制度がもっと広まってほしいと思っています。

日本の「主婦力」は手つかずの埋蔵金

――安倍政権は盛んに女性の活躍を訴えていますが、経沢さんの目にはどう映っていますか?

女性の活躍についてはいろいろな議論がされていますが、その多くが若い世代の働き方だったり、管理職を増やす話だったりします。しかし、私は、それのみならず日本の主婦の皆さんが持っている「主婦力」をどう活かすかももっと注目されていいと思います。

キッズラインに登録している60代のシッターさんは、月30万~40万円稼ぐ人が少なくありません。彼女たちに共通しているのは、子どもの面倒を見てくれるのはもちろんですが、ごはんを作ってくれる人もいたり、掃除もしてくれる人もいるなど、対応の幅が広いことです。

こういう主婦力の高い彼女たちにこそ、これからの日本でもっともっと活躍する環境の整備が必要です。

なぜなら、彼女たちの力を必要としている子育て世代がたくさんいるからです。都会で共働きで働いている親たちにとっては、遠くのおばあちゃんより近くのシッターさんのほうがよっぽど頼みやすい。

もちろん、女性の政治家や企業内の女性管理職を増やすことも重要です。こういうイニシアチブをとる女性たちがいないと、組織のルールが変わらないからです。決める人が皆男性だと、女性のニーズをくみ取るだけの想像力が働きません。半分でも女性が加わっていることによって、変わる力が働くので、女性のリーダーは増えるべきです。

ただし、女性の活躍を促すにあたっては、仕事と育児の両立がいちばんのボトルネックになってしまっているのが現実です。実はそれ以外の大きなボトルネックは存在しないのです。

逆に言うと、この状態を解決する仕組みをつくることによって、全体をボトムアップさせることが可能になります。そして、その仕組みこそがベビーシッターや家事代行の普及なのです。

私は真剣に、キッズラインという、ITを使った便利な家庭サポート、利用する人も働く人も幸せになる仕組みを広めることが、日本の生産性の向上に不可欠だと信じています。それには、ベビーシッターや家庭のサポート役として働くことのすばらしさを広めていきたいと思います。

労働環境がよく、自由に働け、人からは感謝される。そんな新しい働き方のサイクルが生まれる仕組みが必要で、キッズラインでは今後もさまざまな提案をしていきたいと考えています。

(構成:小関敦之)

経沢 香保子 キッズライン代表取締役社長

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つねざわ かほこ / Kahoko Tsunezawa

創業間もない楽天で社長室や楽天大学等の新規事業を経て、26歳で自宅でトレンダーズを創業。女性起業塾や女性ソーシャルメディアマーケティング等を展開し、2012年東証マザーズに当時最年少女性社長として上場。プライベートでは3回の出産を経験、現在は1男1女の母。2014年、キッズライン(当時カラーズ)設立。女性のHappyは、仕事・美・パートナーシップの両立と考え、事業展開中。女性起業家サロン主宰。

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