ベビーシッターこそ「生産性向上」の切り札だ 経沢香保子氏は「日本人の勝算」をこう読んだ
――経沢さんにとって、『日本人の勝算』にはどのような学びがあったのでしょうか?
経営者としての責任と覚悟
第一に、経営者には平均賃金を上げる責任があるという話です。
当社のスローガンにもありますように、私の今の仕事はベビーシッターを日本の社会に広げることです。広く普及させるためには、利用料金が安いほうが利用者にとってありがたい反面、シッターさんは稼げたほうがいいという相反する状態で、料金をどうするのがベストなのか、ずっと課題として持っていました。
キッズラインの仕組みでは、テクノロジーを活用することで中間コストを圧倒的に下げているので、シッターさんも利用者さんも倍増しています。
同時に、キッズラインの良さは、シッターさん自身が自分の時給を決められることにもあります。下限だけは1000円と決めているのですが、それ以上ならシッターさんの自由です。一方の利用者である親御さんたちは、それぞれのシッターさんの時給や能力、居住地などを考慮の上、気に入ったシッターさんに依頼するのです。
私たちもサービス開始前は、この仕組みだとシッター料金が安い人ほど需要が多くなるように想定していました。ですが、実際はそうでもありませんでした。なぜなら、育児に対する親御さんたちのニーズは均一ではなく、高い料金を支払っても、英語ができたり、病児のシッティングができるなど、プラスアルファの能力を希望する人もたくさんいるからです。
現在の依頼価格は時給1300〜1600円がメインですが、英語ができる方や、即日対応可能、料理もできるなどの理由で、時給2500〜3000円で活躍される方もたくさんいるのです。優秀な保育人材が確保できる流れになっているのではないかと自負しています。
このように、価格については何がベストなのか常に疑問を持っています。そんなときに『日本人の勝算』を読んで、シッターさんの時給を上げていくことも、日本全体にとって重要なんだということを再認識したのです。
また、当社はベンチャーなので創業3年くらいずっと赤字で、社員にも苦労をかけたのですが、本を読む前から社内の平均賃金を上げていくという方針を持っていました。その直感が理論的にも正しかったと太鼓判を押されたようで、心強かったのです。
結局、シッターさんの時給にしても社員の賃金にしても、上げていくことで、中長期的には経済にプラスになるという話に強く共感すると同時に、経営者として平均賃金を上げていく責任を再認識させられました。
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