ファーウェイの奇跡を生んだ中国の甚大な加護 3月の正念場を巨大企業は乗り越えられるか

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価値観を共有できない外国政府=中国、それに恩義のある企業=ファーウェイという文脈であることは言うまでもない。

ファーウェイはこういったアメリカ政府の見方を、全面的に否定している。自社は創業者と従業員で全株を保有する民間企業であり、国有企業のような政府との資本関係は一切ない。活動の原資は世界の顧客とのビジネスで生まれた収益であり、共産党政府の意向をくんで顧客を害することはない――。こういう主張を一貫して行っている。

創業者の任正非氏。日本メディアとの会見では「記者や社会に対してオープンであり続ける」と語ったが、政府との関係については詳らかにしていないことがまだ多々ある(撮影:梅谷秀司)

だが、中国であれ世界のどの国であれ、政府が自国企業をコントロールする金は、資本だけではない。東洋経済は現在、ニュースレター形式の深層リポート「ファーウェイの真実」を配信しているが、リポートのための調査の中で、ファーウェイと政府のつながりを示す興味深い情報を掘り当てた。

中国には政府が100%出資する政策性金融機関として、中国国家開発銀行と中国輸出入銀行、中国農業発展銀行の3つがある。このうち最大手の開発銀が公式サイトで、ファーウェイをどのように保護し、巨大企業に育ててきたかについて詳しく触れているのだ。中国人民政治協商会議(共産党政府の諮問・助言機関)の機関紙の記事を転載したもので、以下のような内容だ。

「加護があったから成長できた」

「ファーウェイは当初は世にほとんど知られていない民間企業だったが、今では世界でも名だたる通信設備メーカーだ。売上高は世界の同業に比べてもトップである。この『ファーウェイの奇跡』の背後には、開発性金融がある。

開発銀はファーウェイに対し2004年12月、100億ドルの融資枠を設定した。同社がグローバル市場に参入し、5年以内に海外売上高100億ドルを超えることを支援している。まさにこの巨額融資の加護があったからこそ、ファーウェイは海外売上高目標を2年も前倒しで達成できた。そればかりか、金融危機(リーマンショック)の風雨に逆らって成長できたのだ。

その後の協業の中で、開発銀は巨額の融資を保証することによって企業(ファーウェイ)に海外進出の道を開いた。海外の通信事業者に対し、ファーウェイの設備を買うための信用貸し付けを行うことで、開発銀とファーウェイ、海外の通信事業者は相互に利益のある鉄の三角形を構成してきた。

開発銀による融資の後押しを受けて、ファーウェイは売上高で世界トップになった。同時にイノベーションによって、世界の産業の中で研究開発やブランドにおける高い位置を占め、メイド・イン・チャイナからイノベーテッド・イン・チャイナに変わる、独自イノベーションの道を探り当てたのだ」

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