ファーウェイの奇跡を生んだ中国の甚大な加護

3月の正念場を巨大企業は乗り越えられるか

開発銀の業務の多くは開発性金融と呼ばれ、中国の産業育成や経済外交など政策に沿ったプロジェクトに中長期資金を供給している。

中国のファーウェイ本社にあるサイバーセキュリティ・ラボ。サイバースパイ疑惑を払拭するのは至難だが、そもそも本質的な論点はそこではない(撮影:梅谷秀司)

開発銀はファーウェイとの関係において、顧客である海外の通信事業者に対して融資を行うことで、間接的にファーウェイの経営を支援してきたわけだ。そしてこの融資手法は、世界の通信業界で広く活用されてきた「ベンダーファイナンス」という資金調達の仕組みにがっちりとはまった。

通信事業者にとっての最大の経営課題は、継続的かつ大規模な設備投資の負担をどうするかだ。とくに3G(第3世代)以降、高速大容量のモバイル通信時代に突入すると、通信事業者には従来以上に投資の規模・スピードが求められるようになった。

この課題の解決策として通信機器メーカーは、顧客の通信事業者に自社製品を採用してもらう見返りに設備投資資金を提供する「ベンダーファイナンス」を積極的に展開した。もともとはフィンランド・ノキアやアルカテル・ルーセントといったファーウェイのライバル企業が広く活用した手法。日本でもソフトバンクが携帯電話事業に参入する際、外資機器メーカーに設備投資の大半をファイナンスしてもらうことを前提にしている。

扱いは国有企業並み

だがベンダーファイナンスでは通信会社の経営悪化が融資の焦げ付きに直結し、メーカーにとっての不良債権に変わる。このため欧米メーカーは近年、ベンダーファイナンスを縮小させている。その空隙を埋める形で躍進したのが開発銀とファーウェイだ。通信事業者にとってはベンダーファイナンスと同じ効果があるのに、ファーウェイの財務は傷まない。そして世界の通信市場における中国企業の躍進という、政策目標も達成できる。

開発銀は、中国政府の外貨準備高が増大した2000年代前半からは、企業の海外進出支援にとくに軸足を置いている。またリーマンショックで世界の融資が収縮した局面では、開発銀の国際業務は逆に飛躍的な伸びを示した。

前述の開発銀の公式サイトでは、ファーウェイについてのくだりの直後に、同様に支援を受けた企業として中国石油天然気(ペトロチャイナ)、中国石油化工(シノペック)、宝山鋼鉄、中国五鉱などが列挙されている。これらの企業はいずれも、中央政府が直轄する最重要国有企業(中央企業)。つまりファーウェイは資本構成では確かに民間企業だが、政府からは最重要国有企業と変わらない扱いをされている。

アメリカはこういった事実を基に、ファーウェイが中国企業でもとくに中国共産党政府の恩恵を受け、政策の実現に役立っていると理解している。この構図が変わらない限り、アメリカはファーウェイを問題視し続けるだろう。

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