デジカメ勢力図に激変の兆し 体力勝負で脱落する中堅も
年末商戦、一眼レフが安売り攻勢
実際、一眼レフの伸びは鈍化が目立っている。キヤノン、ニコンの2強は今期のレンズ交換式カメラの販売台数を前年割れの計画に引き下げた。これは両社がデジタル一眼レフを発売してから初めてだ。
業界関係者によると「キヤノンもニコンも一眼レフを造り過ぎた。2011年のタイ洪水で品不足に陥った反省の反動のようだが、これで昨年の在庫が溜まって旧式モデルの安売り競争になっている」という。
東京都内の大手家電量販店では、売れ筋の一眼レフ入門機が大きく値崩れしている。キヤノン「EOS Kiss X5」(11年3月発売)はレンズ2本付きでメーカー想定価格が13万円に対し、販売価格は6万円台。ニコン「D3200」(12年5月発売)もレンズ2本付きで同12万円に対し、5万円台に値段を落としている。
一方、富士フイルム「X―E2」は発売されたばかりでメーカー想定の15万円からほとんど値崩れはない。オリンパスの「E-M1」もメーカー想定の22万円をほぼ維持し、昨年モデルの「EーM5」も、想定13万円に対して店頭価格は9万円弱に踏みとどまっている。
「一眼レフが安さで売れている」(家電量販店の販売員)状態で、2強の旧式一眼レフが足元の販売ランキングの上位を独占。中堅メーカーが「一眼レフキラー」として新規投入するミラーレス一眼は、値下がり率が小幅で収益に貢献している面もあるが、数量ベースでは勝負どころの年末商戦で価格攻勢の返り討ちを受けている状態だ。
大手2強、ミラーレスに冷ややか
「軽いうえにきれいな写真が撮れる」ミラーレス一眼は、08年にパナソニックが世界で初めて商品化。12年までに各社が追随したが、足元では、伸び悩みを見せている。特に欧米では「カメラは大きいほど高級」との認識が強く、当初の期待ほど市場は広がっていない。
ニコンの木村真琴社長は「今までミラーレスをたくさん出してきたが、商品としての伸びがあまりなかった」と認めている。ミラーレスの「小さくて軽い」という商品性では「コンパクトと一眼レフの市場の間に挟まれて、大きく伸びていくのが難しくなる」という。
業界首位のキヤノンの御手洗冨士夫会長は「うちはやはり一眼レフが本命。ミラーレスは造るが市場の穴埋め」とのスタンスを示す。レンズ交換式カメラの市場では「一眼レフのプロ機から入門機まで充実させる。一眼レフを使う人はお金持ちなので、数年で買い替え需要が見込める。キヤノンのカメラを一度でも使った人は、過去のレンズがすべて使えるので、またうちのカメラを買ってくれるという有利なポジションにある」と「横綱相撲」を続ける構えだ。