微妙に「社会主義」に傾きゆくアメリカの葛藤 民主党には政府の役割拡大を訴える声
資本主義に対する印象も、じわり悪化している。ギャラップ社の調査によれば、資本主義を好感する割合は、2010年の61%から、2018年には56%へと低下している。とくに18~29歳の若年層では、68%から45%へと大きく低下しており、2018年には社会主義を好感する割合(51%)を下回った(図2)。
2020年の大統領選挙に関しても、AXIOSの調査では、18~24歳の回答者の8割以上が、「アメリカの経済システムの変革を約束する候補者」を歓迎すると答えている。
もちろん、アメリカの若年層が社会主義の概念を十分に理解していると考えるのは早計である。しかし、環境問題や格差問題などを切り口に、現在の経済システムのあり方に、疑念を示す傾向が強まっているのは間違いなさそうだ。
オヴァートンの窓は動くのか
「オヴァートンの窓」という概念がある。「世論に受け入れられる思想は一定の範囲(窓)に限定されている」とする考え方であり、極端な政策が広く論じられた場合には、その「窓」が移動する効果があるとされる。
現在のアメリカの状況に引き直せば、社会主義のかおりがする極端な提案に実現性があるかどうかは、さして重要な論点ではないのかもしれない。むしろ重要なのは、これまでは異端とされてきた政策が広く議論されることで、アメリカの政策論の中心軸が、民主党が得意とする方向に移動する可能性である。
ティー・パーティー運動にしても、時代の雰囲気をすくいあげ、少なくとも一時的には共和党のエネルギーとなったはずだ。その勢いが失われた一因は、現実味のある具体策が追いつかなかった点にある。どこか1980年代の保護主義の名残が感じられる通商政策に象徴されるように、トランプ政権が掲げるアメリカ第一主義も、必ずしも斬新なアイディアの宝庫とは言えない。
2020年の大統領選挙に限れば、「社会主義」のレッテルが民主党を苦しめる展開は、容易に想像できる。しかし、次世代の期待に答える政策論の戦いでは、共和党は思わぬ落とし穴に陥ろうとしているのかもしれない。
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