微妙に「社会主義」に傾きゆくアメリカの葛藤

民主党には政府の役割拡大を訴える声

2020年の大統領選出馬を表明したバーニ―・サンダース上院議員は、自身が社会主義であることを標ぼうしている(写真:Yuri Gripas/ロイター)

アメリカで社会主義という言葉が、にわかに注目を集めている。背景には、若い世代を中心とした、経済システム変革への期待がある。いよいよ熱を帯びてきた2020年の大統領選挙でも、大きな論点になりそうだ。

「私たちは、アメリカは、決して社会主義国にならないという決意を改めて確認する」

2月5日に行われた一般教書演説でドナルド・トランプ大統領は、「アメリカに社会主義を導入しようという要求を警戒している」と述べたうえで、冒頭のように宣言した。全米が注目する演説での唐突な発言は、アメリカにとって縁遠い言葉だったはずの社会主義が、にわかに政治の重要なキーワードになってきた現状を反映している。

民主党で台頭する「大きな政府論」

一般教書演説での発言にもあるように、社会主義という言葉を使いたがるのは、トランプ大統領を筆頭とする共和党陣営である。2020年の大統領選挙を前に、政府の役割を拡大するような提案に傾く民主党に社会主義のレッテルを張り、有権者の警戒感をあおる戦略だ。

トランプ政権の用意は周到である。一般教書演説に先立ち、中間選挙直前の2018年10月には、トランプ政権で経済分析を担当する経済諮問委員会(CEA)が、「社会主義の機会費用」と題する大部の報告書を発表。「カール・マルクスの生誕200年にあわせるかのように、社会主義がアメリカの政治に復活しつつある」と始まる報告書には、社会主義による悪影響が綿々と記されている。2020年の大統領選挙に向けて、民主党の提案がまとまるのを待つまでもなく、社会主義を仮想敵とする理論武装は整っている。

確かに民主党では、政府の役割を大胆に大きくしようとする意見に勢いがある。2020年の大統領選挙で民主党の指名候補獲得を目指す政治家達は、一昔前であれば異端とされてきたような提案に、次々と賛意を表明している。

例えば「メディケア・フォー・オール」と呼ばれる国民皆保険制である。公的保険と民間の保険が混在する現状を前提としたオバマ政権の医療保険制度改革(オバマケア)と異なり、最終的には公的保険への一本化を目指す改革だ。現役世代の多くが職場を通じて加盟している民間保険を廃止する劇薬であり、理想論として語られることはあっても、その実現は難しいとされてきた。

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