微妙に「社会主義」に傾きゆくアメリカの葛藤 民主党には政府の役割拡大を訴える声

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具体的な政策の内容にも不安がある。一連の提案は、財政赤字の大幅な拡大につながりやすい。オカシオコルテス議員が所得税の最高税率を70%まで引き上げると示唆しているように、富裕層や企業への大型増税を財源とする考え方もあるが、あまりに大規模な増税は政治的なハードルが高く、実現可能性が乏しい。

オカシオコルテス議員のような振り切った主張を行う人たちの周囲には、「巨額の財政赤字は問題ではない」とする議論に傾倒する向きがある。「現代貨幣理論(Modern Monetary Theory:MMT)」と呼ばれる主張だが、民主党の主流にはなり切れていない。むしろ、共和党で極端に小さな政府を目指したティー・パーティー運動のように、一部の熱狂的な支持者に流され、現実に即さない無責任な政党に変質していくリスクが指摘され始めている。

「民主党は社会主義」のレッテルに喜ぶ共和党

大統領選挙の候補者も、大きな政府との距離感には腐心している。遊説先でハリス議員は、「(サンダース議員等と違い)自分は民主社会主義者ではない」と明言。ウォーレン議員も「資本主義を信じている」と述べ、社会主義とは一線を画す。メディケア・フォー・オールではブッカー議員などが民間保険の廃止までは求めないとしており、GNDについても「実現する内容もあれば、しない提案もあるだろう(ハリス議員)」といった発言がきかれる。

社会主義のレッテルを恐れ、大きな政府との距離感に腐心する民主党の姿は、共和党には天恵のように映っているようだ。共和党のミッチ・マコーネル上院院内総務は、GNDの決議案を、上院での投票にかける方針を明らかにしている。態度を曖昧にしたい民主党の議員に踏み絵を迫り、党の分裂を促すとともに、これに賛成した議員に対しては、次の選挙での攻撃材料にする狙いがある。

しかし、そんな共和党にも落とし穴がある。具体的な政策論での出遅れである。有権者の関心は、民主党に有利な方向に動きつつある。民主党の批判だけに活路を見出そうとしていると、共和党は世論に取り残されかねない。

やや長い期間を振り返ると、有権者の関心は民主党が得意とする分野に移りつつある。ピュー・リサーチセンターによる2011年と2018年の世論調査を比較すると、雇用を最重要課題とする割合は30%強、財政赤字の削減を最重要課題とする割合は20%弱も減少している。

一方で、気候変動や環境保護を最重要課題にあげた割合は、いずれも20%弱の上昇を記録している。このほかにも、医療コストの削減や貧困対策への関心が高まる一方で、経済成長の促進やテロ対策への関心は低下している。

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