社員67人、「テレビ埼玉」のクセがすごい! あふれる地元愛で埼玉県民が「テレ玉」の虜に

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実は、千鳥に伝えられているのは集合場所と時間、終了予定時刻のみ。台本すら渡されていない。本人たちは埼玉県のどこに到着したのかよくわからない状態で、オープニングを撮影することも多いという。取材先との打ち合わせもすべてスタッフが行うため、千鳥の2人は毎回リハーサルなしで本番に臨む。初見ならではの二人の新鮮なリアクションやトーク、そしてぶっつけ本番のドキュメンタリー感も、欠かせない要素なのだ。

千鳥を引き立てるスタッフの愛は極めて強い。番組は毎回、「何かを千鳥が紹介する」という発想ではなく、「これを千鳥にやらせてみたい」「千鳥のこんなカットが見たい」というスタッフの願望で企画が立ち上がり、リサーチ、撮影、演出をしていくのだという。いろはに千鳥は、千鳥が紹介するものを楽しむのではなく、「何かをしている千鳥の2人」を楽しむ番組といえる。

番組を担当する制作部の丸山俊輔氏はこう語る。「キー局とは異なる気軽な感じが千鳥に合っている。スタッフは取材先でどのような流れになるかを想像しているのだが、千鳥は毎回、想像を超えてくる。2人ともボケとツッコミができるので、トークは面白いし、飽きない。通常ならカットする場面も使っていると言われるが、それは面白くてカットする必要がないから」。過酷な環境の中でも、千鳥は存分に実力を発揮しているようだ。

番組スタート時の千鳥は今ほどの人気はなく、採算面から存続が危ぶまれた。しかし、視聴者の後押しで放送を続けてきた。最近では千鳥の人気が爆発し、注目度は格段にアップ。ローカル番組ながら、北海道から東北、北陸、四国、九州など16局で放送されるヒット番組へと成長を遂げている。今後も独特のテイストはそのままに、千鳥と親しい芸人など、ゲストも活用して番組を盛り上げていく方針。目指すは埼玉ローカル発の全国制覇だ。

28年間、雨の日も風の日も公営ギャンブル

テレ玉の看板番組の中でも、尋常ではないこだわりを感じるのが「BACH(バッハ)プラザ」だ。埼玉県で行われている公営競技の情報番組で、バッハは戸田のボートレース(B)、川口のオートレース(A)、大宮と西武園の競輪(サイクルのC)、浦和の競馬(ホースのH)の頭文字をとったものだ。

1991年3月30日にスタートし、1万回以上の放送を誇るBACHプラザ。第1回の放送は、なぜバッハと読むのかという解説から始まった(©テレ玉)

番組はその日行われたレースの速報や専門家による解説、翌日以降のレース情報などを取り上げる。30分番組で、月曜日から日曜日の22時30分から放送している。つまり毎日。驚くべきは、1991年3月のスタート以来、28年間1日たりとも休まず放送を続けてきたことだろう。レースが開催される日も、何も開催されない日も、毎日競技情報を伝えてきた。スタッフの執念と公営ギャンブルの熱心なファンに支えられてきた。

2018年8月には放送1万回を突破した。これはテレビ朝日系の長寿番組「徹子の部屋」(1976年開始、2015年に1万回を突破)、同じくテレ朝系の「世界の車窓から」(1987年開始、2016年に1万回を突破)などの有名番組と肩を並べる偉業だった。全国屈指の放送回数を誇る長寿番組といえるだろう。

テレ玉の平本一郎社長もどうやらBACHプラザに強い思い入れがあるようだ。「放送2万回、3万回を目指していく」と公言している。今後も4つの競技がそろう埼玉の地の利を生かし、年中無休の放送が続きそうだ。

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