「3年A組」のヒットが示すテレビの希望と絶望 思い切って挑戦するか、安全な橋を渡るか

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しかも、その熱血指導は、ねたみや逆恨み。イジメや同調圧力。無責任なネット書き込みや拡散。それらに無関心や見て見ぬフリなど、高校生に限らず現代人の問題に対するメッセージとなっているのです。下記にいくつか、柊の発言を挙げてみましょう。

「過去の自分が今の自分を作る!」「変わるんだ! 悪意にまみれたナイフで、汚れなき弱者を傷つけないように変わるんだよ!」「それが痛みだ! その痛みを一生忘れんなよ」「お前が抱いた悩みや苦しみを誰かにぶつけたか? 仲間に、クラスメートに、教師に。『誰か助けてくれ』って、お前はすがったか?」

「恥を繰り返して強くなるんだ。恥もかかずに強くなれると思うな!」「お前の不用意な発言で、身に覚えのない汚名を着せられ、本人が! 家族が! 友人が! 傷つけられたかもしれないんだ。お前は取り返しのつかないことをやろうとしたんだ」「お前たちはもう感情に任せて過ちを犯せる歳じゃないんだよ。それが許される歳じゃないんだよ!」

まるで昭和の先生を思わせる“お説教”であり、それを最も嫌いそうな10~20代の若年層にもウケていることに、各局のテレビマンたちは「まさか……」と驚いているのではないでしょうか。

また、ドラマのエピソードや柊のセリフが、現在メディアをにぎわせている「バイトテロ」「客テロ」など不適切動画のニュースとシンクロしたことも、「3年A組」の追い風となり、評価は一気に高まっていきました。

思い込みや決めつけに基づく悲観論

「3年A組」のヒットは、テレビ業界で働く人々に希望を抱かせています。

「日曜22~23時台の番組でも視聴率が取れる」「学園ドラマでも視聴率が取れる」「刑事・弁護士らの1話完結事件ドラマでなくても視聴率が取れる」「『教師が生徒を監禁する』という過激な設定が受け入れられ、視聴率が取れる」「熱血主人公やお説教の脚本・演出でも視聴率が取れる」「大半が実績の少ない若手俳優でも視聴率が取れる」

「3年A組」がもたらしたこれらの事実は、テレビマンたちを勇気づけるものとなっているのです。しかし、それらは必ずしもポジティブなものではありません。むしろ、「いかにテレビ業界に絶望感が蔓延しているかを浮き彫りにした」とも言えるのです。

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