「沖縄をなめるな」に若者たちが見せた連鎖反応

分断と歴史、葛藤の島でもがく若者たち(4)

このギャップを埋めるために、動画を撮り続ける決意を固めた。そうしなければ、この場で起きていることが、ないことにされてしまう。そんな焦燥感に駆られた。その年の12月、名護市にアパートに住み始めた。

2017年10月、高江近くの海岸にアメリカ軍ヘリが不時着して機体が大破する事故があったときも、いち早く駆け付けた。米兵に現場から離れろと怒鳴られながらも写真や動画を撮り続けた。その写真をSNSで拡散すると、後日、高江に住むおばぁと会ったとき、いきなり抱き締められた。拡散した写真をプリントアウトして持っていたのだ。そのときのおばぁの言葉が忘れられない。

「フィルムを隠しておきなさい」

フィルムなど存在しないのだが、それより、証拠写真を隠さねばならないという発想が悲しかった。この世代の人たちは、どれだけ抑圧されてきたのか。

彼のブログにこんな動画があった。

辺野古の座り込みの現場で、沖縄県警が強制排除に乗り出している。大勢の機動隊員が座り込んでいるお年寄りを取り囲み、緊迫した空気が漂っている。合図とともに、機動隊員が自分の親や祖父母くらいのお年寄りの手足を担いで移動させる。みんな無抵抗だ。ウチナーンチュ同士、お互いつらいに違いない。

本当の加害者はそこにはいないのに、どこにもぶつけられない怒りが渦巻いていく。まさしく、分断を象徴する場面だった。大袈裟さんは頭に取り付けた小型カメラで撮影しながら、周囲の機動隊員一人ひとりに声を掛けて回る。

「お巡りさん、やめましょう。こんなこと、やりたくないでしょう!」

「仕事上の立場だからわかるけど、話し合いたい」

機動隊員の涙に「あんただって泣いてる!」

だが、どの機動隊員も返事ひとつ返さない。マスクとサングラスをした機動隊員が、ビデオカメラを回している。大袈裟さんの真ん前に立って至近距離から映している。大袈裟さんは、語り掛けた。「お巡りさんだって、いやでしょう」。相手は一言も発しない。正面から向かい合ってお互いを撮り続ける。次の瞬間だ。大袈裟さんが泣き声になる。

「お巡りさん、泣いてるじゃないか!」

機動隊員がサングラスの奥で涙を流しているのが見えたのだ。大袈裟さんの絶叫する声が聞こえる。

「あんた、だって泣いてる! うわーー、うわーー」

嗚咽する声はしばらく続いた。

県民に分断をさせている責任の一端は、本土の人間にあることを突きつけられる映像だ。

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