「会社を赤字にする」営業に欠けている優先順位 優秀な人ほど「取引コスト」を意識している

拡大
縮小

A:「取引金額が大きく、シェアを保つ必要があるお客さま」

取引金額が大きいということは、お客さまの規模も大きく、業界でも有名な会社であるはずです。訪問回数は、多くても問題ありません。そのようなお客さまには、競合他社が日々営業に来ていますし、どの会社でもエース級の営業マンを送り込んできます。

みなさんの働く会社が、他社の追随を許さない製品を作っているのであれば話は別ですが、ほとんどの会社はそうではないはずです。シェアが高いからと、営業活動にあまり力を入れないと、あっという間に、他社に切り替えられてしまいます。私も過去にある会社を担当させてもらい、1カ月に数億円の売上を上げました。これは、シェアがあるから安心と手を抜いている他社の製品を、ことごとく自社製品に切り替えることに成功したからです。

逆に、今まで競合がいなかったため、ほとんど営業活動をしていない会社がありました。しばらくすると、若干製品の性能は落ちますが、他社が参入して必死に営業をかけてきたことで、かなりのシェアを失ってしまったこともあります。

「拡大余地のある取引先」を軽視すべきでない

B:「取引金額は現状ではないが、今後の販売拡大が可能なお客さま」

他社にとってAランクの会社であるが、自社にとっては、まだ取引実績が少ない場合です。業界を代表した会社であることが多く、この会社と取引ができると、会社の大きな実績となり、他社への販売も横展開しやすくなります。今の状態では、アポもなかなか取りにくいですし、すぐに取引が決まるということはないでしょう。ですが、この会社との取引が伸びれば、その後を大きく左右するお客さまになることは間違いありません。この場合は、Cランクの会社よりも訪問回数が多くなければなりません。

営業マンは、今の売上を重要視したいため、Bランクの会社を軽視してしまうことが多いのですが、そこが要注意な点です。

C:「取引金額はそれなりにあるが、拡大余地の少ないお客さま」

取引金額がそれなりにあるということは、手を抜いてはいけませんが、それ以上、伸びないことも確かです。競合他社に取られない程度の訪問回数で問題ありません。このランクの会社は、そんなに手もかけられないため、他社に取られたり、取り返したりを繰り返します。拡大余地がない以上、必要最低限にすべきです。

営業マンにとっては、仲のいい担当者が多いので、つい、訪問回数を増やしてしまいます。ほどほどにしましょう。

D:「取引金額が少なく、拡大余地もないお客さま」

なぜか、このランクに自分の仲のいい担当者がいるからと、月に何回も通っている営業マンがいます。拡大余地があれば別ですが、これ以上、売上を伸ばす可能性がないのであれば、月に1回、もしくは数カ月に1回の訪問でも問題ないでしょう。時間や移動コストなど、取引コストが増えてしまいます。

このように「将来に対しての営業」をすることで、お客さまをランク分けすることができます。将来に可能性がある会社との接点を増やせば、ムダな取引コストをかけずに済むはずです。ビジネスマンにとって、時間とはすなわちコストにほかなりません。こういう意識を徹底させている営業マンが「敏腕」と呼ばれる理由の1つなのです。

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アルファポリスビジネス編集部

アルファポリスはエンターテインメントコンテンツのポータルサイト。小説、漫画、書籍情報などを無料で配信。最近はビジネス系の記事にも力を入れている。

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