星野リゾート、軽井沢で「1泊5000円」のなぜ 将来の顧客「若者」を狙った新ブランドの勝算

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星野氏は1年間で宿泊を伴う国内観光旅行に出掛けた20~30代男性が年代全体の50%程度しかいないことを挙げつつ、「はたして観光業は若者をターゲットにした商品をつくってきたのか。業界一体となって、若者に国内旅行が楽しいと思わせないといけない」と危機感をあらわにした。

それを踏まえ、BEBが取り入れたのが宿泊価格の固定制度だ。利用者全員が35歳以下であれば、曜日や連休にも関わらず、1室1万6000円で値段が変動しない。ホテル業界では長期休暇期間のみならず、休日やその前日に価格を極端に高く設定することが常態化している。BEBを35歳以下の3人で利用すれば、週末でも1人あたり5000円ほどで宿泊できる。

これまで星野リゾートが展開している施設のうち、開示されている施設の年間累計ADR(平均客室単価)は、家族向けのリゾートホテル「リゾナーレ」で約4~5万5000円、「界」が約3~6万5000万円、「星のや」は約6万5000~9万円。BEB5の低価格は際立っている。

低価格はレッドオーシャン

気になるのは、低価格分野の競争が激しい点だ。大手予約サイトを見れば、軽井沢の周辺で、1万6000円以下で泊まれる宿泊施設は100軒近くもある。「仲間とルーズに過ごす」というコンセプトは、アメリカのAirbnb(エアビーアンドビー)など民泊とぶつかる。

この点について星野氏は「低価格帯の競争だけが激しいわけではなく、どこ(の価格帯も業態)も激しい。『界』のような温泉旅館も供給過剰だ」と指摘する。

星野氏によれば、「界」や「星のや」同様、 70~80%の客室稼働率が実現できれば採算が合うように設計したため、収益はしっかり出てくるという。

その秘訣は、チェックインの機械化や清掃オペレーションの自動化により、スタッフ数を最小限に抑えることだ。BEB5の金子尚矢総支配人によれば、スタッフ数は77室を抱える「星のや軽井沢」の3分の1から4分の1まで抑えられる。

とはいえ、星野氏は「『界』でいえば、温泉旅館というモデルは昔からあった。市場調査で把握できることはすべて実現したが、BEBのコンセプトはまったく新しいため、最初から20代にアピールできる(完全な)サービスになっているとは思ってない」と漏らす。

期待と不安が入り交じったBEBは目論見どおりの支持を集められるか。そのためには若い客からよりリアルなニーズを吸い上げ、改良を積み重ねる必要がありそうだ。

森田 宗一郎 東洋経済 記者

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もりた そういちろう / Soichiro Morita

2018年4月、東洋経済新報社入社。ITや広告・マーケティング、アニメ・出版業界を担当。過去の担当特集は「サイバーエージェント ポスト藤田時代の茨道」「マイクロソフト AI革命の深層」「CCC 平成のエンタメ王が陥った窮地」「アニメ 熱狂のカラクリ」「氾濫するPR」など。

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