EU離脱で「英国の食事」の質はどれだけ下がるか 新鮮な野菜や果物が手に入りにくくなる?
特殊な保存食のため、価格6ポンド(約810円、送料別)超と高価。これなら周辺のファストフード店で何か買って食べたほうが明らかに安い。そうはいっても、もしものときのためのトライアルと考えれば食べないわけにはいかない。
袋にお湯を所定の高さまで入れ、中身をかき回し、フタをして待つこと約10分。本来は登山者用の食事なので、そのままスプーンで袋から食べるのが正しいらしいが、投資に見合った気分で食べたいと考え、一応お皿にあけて食べてみた。
缶詰は25年、フリーズドライは7年ももつ
「これなら、下手なシェフが作る茹ですぎパスタよりもずいぶんおいしい。チーズも結構高級なものを使っていそうだ」(一緒に試食した筆者の妻=日本人)
つまり、意外なことにそこそこ「食べられる味」であることがわかった。これならなんとか想定外の非常事態が起きても生き延びられるかもしれない。
ただ、缶詰で25年、フリーズドライで7年間もある賞味期限の長さが気になる。緊急食糧セットを買い求めている客層の多くは比較的年齢が高めらしく、60〜70代以上の購入者のところへは「おそらく、自身の寿命よりも長い期間食べられる保存食」が宅配便で送られてくることになる。
エマージェンシー社のジェームス・ブレイク社長は「キットは発売から1カ月で600セットも売れた」と鼻息も荒い。ただ、保存食の賞味期限が長かろうが、いくら味がおいしかろうが、新鮮な野菜や果物の安価な入手が難しくなるハードブレグジットが引き起こすハンディは解決できない。
世界貿易機関(WTO)の協定税率を基準とした輸入果物への関税は、バナナが17%、オレンジやレモンなどのかんきつ系は14%、トマトは15%に達するという。輸送費の増大に関税負担、さらに「最大25%下がる」とさえ言われる通貨ポンドの下落なども重なり、小さからぬの価格上昇が見込まれ、貧困層にはかなりの打撃になるとみられている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら