EU離脱で「英国の食事」の質はどれだけ下がるか 新鮮な野菜や果物が手に入りにくくなる?
それでも旅行者は、食事がまずくとも「それも含めてブレグジット後のイギリス旅行の経験」ということになるだろうが、現地で暮らしている人々にとって食材不足は文字どおり死活問題となる。
かつて日本でも1970年代にはオイルショックのあおりで急激なインフレとモノ不足が生じ、国民があらゆる物資を求めて苦労した時代があった。今のところ、イギリスであのような混乱は起きていないが、「食材がなくなる懸念」が浮上する中、市民の間で保存ができる食品を買い集める動きが徐々にだが広がっている。主食系のコメやパスタをはじめ、缶詰などの保存できる食品を多めに買ってストックしている人々の声を伝える報道を多く目にするようになってきた。
中央銀行のイングランド銀行は、もしも「ハードブレグジット」が起きた場合の最悪シナリオとして、インフレ率は6.5%まで加速するほか、国内総生産(GDP)については「前年比で8%下落し、4%程度のマイナス成長」にまで落ち込むとの見方を示している。つまり、人々は物不足で狂乱するだけでなく、急速な不況が広がり、かなり困窮度が深まる暮らしになる。
「サバイバル・ボックス」の中身は?
さまざまな懸念が広がる中、「EU離脱後の暮らしで食料確保に困らないように」と、「ブレグジット・サバイバル・ボックス」なる保存食品を集めてパッケージにして売る便乗商法に注目が集まっている。
イングランド北部リーズに拠点を構えるエマージェンシー・フード・ストレージ社は、フリーズドライ食品や缶詰、さらには汚れた水でも飲める特殊なフィルターに、そして着火剤をバンドルした箱詰め緊急食糧セットを295ポンド(約4万円)で販売。主菜(メイン)となる食事のパックが60個、肉製品のパックも48個含まれており、分量的にはこの箱の中身だけで1カ月は生き延びられるという。
この手の非常食系の商品はたいていは「まずい」と相場が決まっているが、もしものときに備えて、筆者もサンプルを取り寄せこの機会に食べてみることにした。
フリーズドライ商品にはさまざまなメニューがあり、イギリスの伝統的な料理「ビーフ&ポテトシチュー」をはじめ、スパゲティやパスタ、そしてインド風カレーに中華風チャーハンと、一見するとなかなかの品揃えを誇っている。これなら1カ月くらいはなんとか暮らせそうだ。
サンプル取り寄せにあたり、最も日本人の口に合いそうなチャーハンを入手しようとしたが、すでに在庫は枯渇状況でカレーも含めて品切れ。やむなく、イギリス人がお昼によく食べる「マカロニチーズ」を買ってみることにした。
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