インテリジェンスから見た、がん秘密兵器説 甘利大臣はTPP交渉中、なぜ舞台を去ったのか(下) 

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1970年代初頭まで、実は米国の連邦議会議員たちの間においてすら、こうした非公然活動について詳しく知りたくもないし、知るべきでもないといった風潮が一般的であった。ところが1974年に、当時“調査報道記者”として知られていたセイモア・ハーシュがこうした活動について問題視し始めたことから火が付き始める。そして、「都合の悪い外国人リーダーたち」だけではなく、数千人もの米国人に対してもCIA(米中央情報局)は、さまざまな工作活動を展開していたことが知られるにつれ、ついに大きなうねりが生じ始めたのであった。

毒殺銃まで振りかざし、アピールしたチャーチ上院議員

この調査委員会において委員長を務め、メディアを相手に「CIAがいかに非道なことを行っているのか」を声高に糾弾したのがフランク・チャーチ上院議員(民主党所属)なのであった。「大統領選挙に出馬しようとしている」と囁かれていたチャーチ上院議員にとって、このテーマは自らを「真実を暴き出す、勇気ある政治家」としてアピールするには恰好のテーマであった。そしてこの委員会の冒頭において、「毒殺銃(poison gun)」を自ら振りかざし、メディアに対してアピールしたのである。

この時行われた議会証言に基づいて「毒殺銃」の全貌を描くとこうなる:

●ここで言う「毒殺銃」で装填されるのは貝毒である。数千人を毒殺することの出来る量の貝毒が米国国内に貯蔵されている

●この毒殺銃で発射された毒(冷凍されたダーツ状のもの)はターゲットとなった人物の血流にすぐさま溶け込み、心臓発作を起こす。発作が起きると、毒はすぐさま分解されてしまうため、その後の検査を行っても原因としては検出されない

●この暗殺銃で毒が発射されると、それは衣服を貫通するが、皮膚の上に極小の赤い点を残すだけである。したがってターゲットとなった人物は蚊に刺されたと感じるか、あるいは何も感じないかのどちらかである

こうした衝撃の「事実」を明らかにしたチャーチ委員会であったが、どういうわけか、その後尻すぼみとなってしまう。その時、表向きの理由にされたのは、先ほど触れたとおり委員長であるチャーチ上院議員が「実は自らの政治的な野心のため、インテリジェンス機関をスケープ・ゴートにしているのではないか」という、どこからともなく流された“うわさ”なのであった。

余談だが、フランク・チャーチ上院議員はこの時代にもう一つ「チャーチ委員会」と俗称された委員会の委員長にもなっている。1973年にチリのアジェンデ政権崩壊と共に連邦議会上院に設立された「多国籍企業小委員会」である。ここでもチャーチ上院議員はCIAによる非合法活動を派手に糾弾する一方、我が国における「ロッキード事件」との絡みではコーチャン同副社長(当時)を委員会の召喚し、質問攻めにしたことでも知られているのだ。

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