親が亡くなってから相続するのは遅すぎる 3月までに生前贈与優遇制度を使うべき?

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ただし、教育資金や住宅取得資金などの支援をお願いしていいのは、あくまでも親や祖父母に十分な経済的余裕がある場合だけです。余裕資金が減って、生活や健康に不安が出るようでは本末転倒です。相談を持ちかけるのは当然、「お金にはかなり余裕がある場合」にしましょう。

さらに、これを両親や祖父母とお金について話し合うきっかけにするのもいいと思います。「年金でどの程度生活できているか」「介護が必要になったときに使えるお金はいくらあるか」「経済的に不安を感じたりしていないか」など、できれば具体的に、難しければおおまかにでも把握できるからです。まずは知ること、そして有効な対策をとることが、何よりの親孝行、祖父母孝行ではないでしょうか。

消費税10%で注意すべきは実家のリフォーム

次のポイントは、実家の状況です。長年暮らしている場合、「水回りなどに不具合がある」「段差など、危険な個所がある」など、リフォームが必要なら、消費税増税前に一緒に検討しましょう。

仮に、リフォーム資金が1000万円かかるとしたら、消費税が8%なら80万円、10%では100万円と、20万円の差が生じます。2019年9月末までに工事終了、引き渡しになれば8%で済みますが、工事が終わるのが10月以降の場合、請負契約の時期によって税率が異なります。3月末までに契約していれば8%で済みますが、4月以降の契約だと10%になるため要注意です。

また、親や祖父母の健康に不安を感じた場合、検査や受診の必要性はないかを検討しましょう。早期発見なら症状が進まないうちに治療に入れます。要支援、要介護の申請が必要なら、早めに手続きしましょう。要支援、要介護に認定されれば、自宅をバリアフリー化する場合、20万円(工事費の9割。所得によっては7~8割)が支給されます。

終活についても確認しておきたいところです。もしものとき、「延命治療を望むか」「どんな資産を保有していて、どう分けたいか」などは考えておくように促したいものです。親が50代、60代だと、「まだまだ早い」と考えがちですが、元気だからこそやっておくべきだと思います。認知症が発症したり、重篤な病気にかかったりした場合は、とてもそんなことはできないからです。「身近な人が元気なうちに話しておきたいお金のこと介護のこと」

時が経てば考えが変わる可能性もありますが、定期的に見直せば問題ありません。早めに終活について動き出すことが重要です。以前、エンディングノートの書き方についても述べていますので、参考にしてください(『エンディングノートで書く3つの大事なこと』)。また「身近な人が元気なうちに話しておきたいお金のこと介護のこと」もお役に立てると思います。「元気なうちにやりたいことは何かを聞けば、親孝行、祖父母孝行のヒントにもなります。

井戸 美枝 ファイナンシャルプランナー

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いど みえ / Mie Ido

神戸市生まれ。 関西と東京に事務所を持ち、年50回以上搭乗するフリークエントフライヤー。講演や執筆、テレビ、ラジオ出演などを通じ、生活に身近な経済問題をはじめ、年金・社会保障問題を専門とする。『世界一やさしい年金の本』(東洋経済新報社)、『知らないと損をする国からもらえるお金の本』(角川SSC新書)、『現役女子のおカネ計画』(時事通信社)、『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください!』(日経BP)『親の終活、夫婦の老活 インフレに負けない「安心家計術」』(朝日新書)など著書多数(ホームページ​経済エッセイスト井戸美枝FBページ)。

 

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