日本人のビジネスマンがこれに違和感を覚えるのには理由があります。自分の会社の人間をお客様の前で呼ぶとき、たとえそれが自分の上司であろうとも社長だろうとも「山田はこう申しております」「社長の田中から説明させます」と呼び捨てにします。「山田さんはこう言っています」ではないですね。
これはこれで外国人の立場からするとかなりわかりにくい習慣で、場合によっては悲劇を招きます。こんなエピソードを聞いたことがあります。
タクシーの中で突然、社長を呼び捨てた
まだ不慣れながらも日本語がある程度できる外国人ビジネスマンが、社長(ここでは仮に田中社長とします)と数人で取引先に行ったそうです。その際、同僚が取引先に対し「うちの田中が」と呼び捨てにしているのを聞いて「あれ? 僕の知らないうちに社長のことは田中って呼んでよくなったんだ!」と勘違いし、帰りのタクシーで社長を「田中!」と呼んだら、明らかに車内がおかしな空気になったそうです。
この話が実話かどうかも定かではありませんが(実話でないことを祈ります)、皆さんの周りに外国人のスタッフがいる場合、こうなる前によく説明してあげてください。訪問先からの帰りのタクシーの空気が重くならないように。
自己紹介で最高難度と言えるのが、かなりお年を召したイギリス人です。基本的にこうした方は、他人から紹介を受けるまで自分から相手に話しかけないことを紳士のマナーとしているため、誰からも紹介を受けないと、本当に何時間でも部屋の隅に黙ってたたずみ続けます。
このような場合、この方を連れてきた人に紹介してほしい、と頼む必要があります。紹介を受けるとそれまで無口だと思っていたご老体が、堰(せき)を切ったようにしゃべり始めます。
相手をどう呼ぶかについてかなり熱く語ってしまいましたが、先に述べたように「相手に敬意を示す」ことができているかどうか、ここは英語でも外してはならないポイントです。例えば「Can I talk a second? Would you please……」などは「敬語」と言ってもよい表現ですね。映画やドラマなどのセリフで目上の人にどういう言葉で話しているか、ちょっと気にしてみると面白いかもしれません。
なお、「Can I talk a second?」については、母親がいたずらをした子どもに言う場合はニュアンスがだいぶ違います。これは日本語で言うと「ちょっといいかしら……」と、もう怒りを通り越してむしろ丁寧になっているという、非常にまずい状態です。
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