1本400円高級キットカットが生まれた深い理由 バヌアツで育成された「希少カカオ」を使用

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ただし、あくまで「キットカット」なので、チョコレートの甘さ・なめらかさとウェハースの食感を併せ持った、キットカットというイメージを崩さない商品に仕上がっている。カカオ分が高いチョコレートや、ビターチョコレートを食べ慣れている人には甘く感じられるかもしれない。

「ボルカニック」シリーズも、なめらかなチョコレートとウェハースがコラボする、キットカットらしい味に仕上げられている(筆者撮影)

「キットカット ショコラトリー」の商品を合わせ、キットカットはバレンタインデーや受験期といったイベント時だけでなく、日常のおやつやプレゼント、観光のお土産などに広く人気のあるチョコレート菓子だ。希少カカオを用いるような「こだわりの味」と、「誰もがおいしく思う味」のバランスが難しいところだろう。

ただ、キットカットのような市場で大きなシェアを占めるチョコレートに希少カカオを用いていくことには、ある重要な意味を見いだすことができる。消費者と生産者を結ぶ役割だ。

品質のよいカカオを得るために

「私たちが希少カカオを扱う小さな農園と取引をすることには大きな意義があると考えています。農園に対しては正当な対価を支払って、自ら発展してもらうことができます。また消費者はカカオの栽培法や産地について興味を持ち、学んでもらうことができます」(ラクロワ氏)

品質のよいカカオを得るためには、栽培や発酵、乾燥などを、適切かつ丁寧に時間をかけて行う必要がある。ただし世界のほとんどのカカオ産地では、品質よりも生産量が優先されている。品質のよいカカオ豆を作るためには、時間と同時に、投資も必要だからだ。生産者が栽培のための十分な知識を持っていない場合もある。近年少しずつ広がっている希少カカオのブームは、そうした現状への一石となるかもしれない。

ネスレグループでは「カカオプラン」として、カカオ産地にカカオ苗木の提供から、栽培法の講習会実施、水や道路・学校を始めとした環境の支援などを行っている。農業従事者とそのコミュニティの生活向上を通じ、質のよいカカオを持続的に調達することが目的だ。2020年までに「ネスレ カカオプラン」を通じて23万トンのカカオを調達することを目標として掲げている。

希少カカオのチョコレートは、2月上旬にル パティシエ タカギからも発売。写真のタブレット(1620円)とボンボンショコラ(1998円)の2タイプだ(筆者撮影)

なお、火山島産を含む希少カカオチョコレートは、ル パティシエ タカギの都内4店舗でも2月から順次発売されている。バヌアツ、パプアニューギニア、フィリピンそれぞれのタブレットタイプと、3種類すべてが味わえる6個入りのショコラボンボンだ。キットカットとはまた別の希少カカオらしさが楽しめるはずだ。

圓岡 志麻 フリーライター

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まるおか しま / Shima Maruoka

1996年東京都立大学人文学部史学科を卒業。トラック・物流業界誌出版社での記者5年を経てフリーに。得意分野は健康・美容、人物、企業取材など。最近では食関連の仕事が増える一方、世の多くの女性と共通の課題に立ち向かっては挫折する日々。contact:linkedin Shima Maruoka

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