平成最後、首相の施政方針演説を読み解く 毎月勤労統計の責任には触れず、守りを優先
一方、前臨時国会で政府与党が「生煮え批判」を押し切って強引に成立させた外国人労働者の受け入れ拡大のための改正出入国管理法について、首相は最後で簡単に触れたが、予想される同法施行に伴う混乱の回避策などには言及しなかった。
首相が「政権浮揚のカギ」(側近)としている首脳外交について、「今こそ、自由貿易の旗を高く掲げなければならない。自由で、公正な経済圏を世界に広げていくことが、我が国の使命」と、自由貿易の維持・拡大に向け、首相自らが国際社会をリードしていく決意を強調した。
その一方で安全保障政策では「我が国の外交・安全保障政策の基軸は日米同盟」とし、「日米同盟は今、かつてなく強固になっている」と首相とトランプ大統領との信頼関係を誇示。沖縄米軍基地問題についても「(日米の)深い信頼関係の下に、基地負担軽減に取り組む」とし、沖縄県との対立が続く米軍普天間飛行場の辺野古移設を進めることで「一日も早い普天間基地の全面返還を実現していく」と従来の方針を繰り返した。
日ロ交渉加速へ決意と自信
さらに、日中関係回復を安倍外交の成果として強調したうえで、当面の焦点の日ロ外交については「領土問題を解決して、平和条約を締結する」「次の世代に先送りせずに必ず終止符を打つとの強い意志をプーチン大統領と共有した」などと交渉加速への決意と自信を示した。
最後に憲法改正に触れ、「憲法は、国の理想を語るもの、次の時代への道しるべ」との持論を述べたうえで、「国会の憲法審査会の場で、各党の議論が深められることを期待する」と踏み込んだ言及を避けた。
首相は2018年の施政方針でも「各党の議論に期待」とあえて国会任せの姿勢を示して「言っていることが普段と違う」(立憲民主幹部)などと批判を浴びたが、通常国会の憲法審査会での本格論議開始も見通せない現状から、与野党とも首相発言を冷静に受け止める雰囲気だった。
国会は30日から2月1日まで衆参両院本会議での各党代表質問が行われ、2月4日から2018年度第2次補正予算案の衆院予算委審議が始まる予定だ。野党側は統計不正問題での集中審議開催を要求しており、政府与党が目指す2月8日からの2019年度予算案の審議入りは微妙だ。
今年は4月に統一地方選、7月に参院選という「選挙イヤー」だけに、国会での与野党対立の激化は避けられない。「亥年選挙の初戦」で与野党対決となった27日の山梨県知事選は、与党推薦候補が主要野党推薦の現職に競り勝った。国政選挙並みの総力戦で挑んだ与党は「幸先の良いスタート」(二階俊博自民党幹事長)と胸を撫でおろしたが、野党陣営の足並みの乱れにも助けられた結果で、「追い風とばかりは言い切れない」(公明幹部)が実態だ。
国会前半戦は、巨大与党の数を背景に安全運転に徹して政局運営の主導権を維持する構えだが、統計不正調査への批判の拡大は必至。首相自身の泣き所とされる「モリカケ疑惑」も引きずっているだけに、予算案の年度内成立を含めて国会前半の乗り切りも容易ではなさそうだ。
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