トヨタ「ヴィッツ」、発売8年超でも売れるワケ 2018年の販売ランキングでは9位に入った

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ヴィッツの刺激を受け、ホンダは、欧州市場を丹念に視察したうえで独創的価値を求めたフィットを2001年に発売した。ロゴの後継車として登場したフィットは、ヴィッツと違い使い勝手を徹底的に見直し、外観も速度感より実用性の高さを見せる造形とした。

日産マーチも、2002年の3代目で外観の造形を大きく変え、車体色を10色以上そろえて見栄えを大きく進歩させた。ヴィッツの誕生は、小型車といえども廉価で実用に足るだけでない付加価値が求められることを意識させ、ホンダや日産を本気にさせるほどの衝撃だったのである。

ヴィッツの2~3代目も、そうした欧州受けする造形や走行性能を中心にモデルチェンジがなされ、壮快な運転感覚の小型車という価値は変わっていない。そのうえで、欧州市場においては、初代からディーゼルターボエンジンを用意し、あるいは中近東向けには大型ラジエターを装備するなど、トヨタらしいきめの細かい市場対応も行っている。

2011年に日本向けにHVのアクアが新発売されると、翌2012年には欧州のヤリスにHVを車種追加している。当時のアクアの開発責任者は、「欧州では、それほどヴィッツへの認識が高く、ヴィッツにもハイブリッドシステムを適用できるよう開発した」と語っている。それら商品性を高める努力の成果として、2017年時点におけるヴィッツの世界販売台数は、米国で好評のカムリや、HVの象徴であるプリウスをしのぐ累計52万台を達成している。

動力源が選べ、降雪地域で重宝も

トヨタは、2017年に世界ラリー選手権(WRC)へ18年ぶりに復帰した。その車種に選んだのがヤリス(ヴィッツ)である。かつてのトヨタのラリー車は、セリカやカローラであり、ヤリスへの大きい期待をうかがわせた。2019年シーズンの競合は、フォード、シトロエン、ヒュンダイである。開催地は、欧州各国はもちろん、北欧、中南米、中近東、豪州におよぶ。グローバルカーとしてヤリスがいかに重要な車種であるか、競技の世界からも垣間見ることができる。

ヤリスWRCの2019年仕様(写真:トヨタグローバルニュースルーム)

WRCの中心的な開催地域である欧州受けする走りのよい小型車という価値に加え、国内販売においては、ほぼ同一の車格となるアクアと比べ、いくつかの特徴的な状況がヴィッツには見えてくる。

HV専用車のアクアは、動力源がハイブリッドシステムのみだ。それに対しヴィッツは、排気量1.0L、1.3L、1.5L(GRスポーツのみ)のガソリンエンジンと、アクアと同じ1.5Lエンジンにモーターを組み合わせたハイブリッドの計4種類から選べる。また、ガソリンエンジン車には4輪駆動の設定もある。ことに降雪地域では、重宝する人が多いだろう。

原動機の種類が多いことにより、販売価格もアクアが約178万円からとなるのに対し、ヴィッツは約118万円からという設定だ。生活を支える小型車として、60万円の差は大きい。

また、原動機に1.0Lのガソリンエンジンがあることから、エンジンルーム内に余裕ができるためだろう、ヴィッツの最小回転半径は4.5メートルからであるのに対し、HVのみのアクアは4.8メートルからとなる。車体全長が4メートルを超え、前後タイヤ間の距離ホイールベースがより長いアクアに比べ、ヴィッツはわずかながら車体全長が4メートルを切り、ホイールベースも短いことによって、小回りのきく小型車として市街地での取りまわしのよさで上回る。

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