発達障害の人が身につけるべき「世渡り発想」 自分の特性をもっと把握して付き合おう

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すべての人が、環境を調整することができればよいのですが、なかには「やりたいこと」ではお金が稼げない、お金を稼ぐために「やるべきこと」をたくさんしなければならない、という人もいると思います。

「生産性」は低くてもいい、もっと優先してほしいこと

ただ、発達の特性があって、子どもの頃から「やるべきこと」の多い生活を強いられている人が、「やりたいこと」を我慢して、ただお金を稼ぐためだけの生活をしていたら、そう長くは続かないだろうと思います。

『発達障害 生きづらさを抱える少数派の「種族」たち』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

「やりたいこと」を十分にするためには、発達の特性に合わせて学校や職場などを選ぶこと、診断を受けて福祉サービスなどを利用することが必要になる場合もあるでしょう。人によっては、勉強や仕事はほどほどにして、福祉サービスを受けながら、無理せずに暮らそうという選択をすることもあると思います。

こうして、一人ひとりが自分のペースで生活することを推奨すると、そういうライフスタイルを「生産性がない」と言って批判する人もいるかもしれません。

しかし、生産性は、人間の健康や幸福よりも優先されるべきものではないでしょう。少なくともメンタルヘルスを大切にするという視点からいえば、人間にとって、生産性を高めることよりも自分の本当に「やりたいこと」を中心とした生活を送り、健康に幸福に暮らすことのほうが重要です。

最後に、発達障害は決して特別なものではないということをお伝えして、本稿を締めくくりたいと思います。発達の特性は、いわゆる「ふつう」と地続きのものです。そして、少数派には、少数派の生き方があります。そのことを少数派の人にも、多数派の人にもお伝えしたいと願っています。

この話が、発達障害という少数派のグループを、何かができない「障害者」というよりも、独特のスタイルをもつ人たちとして理解することに少しでも役に立ってくれれば幸いです。

本田 秀夫 信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授

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ほんだ ひでお / Hideo Honda

精神科医師。医学博士。特定非営利活動法人ネスト・ジャパン代表理事。1988年、東京大学医学部医学科を卒業。1991年より横浜市総合リハビリテーションセンターで20年にわたり発達障害の臨床と研究に従事。その後、山梨県立こころの発達総合支援センターの初代所長などを経て、2014年より現職。発達障害に関する学術論文多数。英国で発行されている自閉症の学術専門誌『Autism』の編集委員。日本自閉症協会理事、日本自閉症スペクトラム学会常任理事、日本発達障害学会評議員。2013年刊の『自閉症スペクトラム』(SBクリエイティブ)は5万部超のロングセラー。

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