アナ雪「立役者」再就職が女性の反感買う事情 「#MeToo」運動は2019年も生き続ける

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しかしラセターには、#MeTooムーブメントの発端となったハーベイ・ワインスタインやケビン・スペイシーのような刑事訴訟に至る事例がない。だから、場合によっては「許してもいいのでは」と言う声が出る余地があるのだ。

突然にして爆発したセクハラ暴露で職を失った男性はハリウッドにも政界にも多いが、罪の程度や反省の度合いはさまざま。昨年にはマット・デイモンが「(セクハラの加害者を)一括りにすべきではない」と発言して、強く非難されている。おかげでデイモンもその後しばらくおとなしくする羽目になり、男たちはもうこの事柄について表向きには意見を言わなくなった。

ラセターの件に関しては、#MeTooのリーダー的存在の1人である女優アリッサ・ミラノも、「この業界は、今、(セクハラで非難された)人々が反省し、行動をあらためたということをどう証明すればいいのかを判断すべき段階にある。そして、そのような行動を絶対に許さないという契約の下であれば、それらの人々に新たなチャンスをあげてもいいと思う」と述べている(興味深いことに、ミラノはデイモンが先の発言をした時に彼をバッシングした1人である)。

「#MeToo」運動は2019年も生き続ける

もちろん、レイプ犯などがその範疇に入らないのは言うまでもないとしつつ、彼女は「この問題には白と黒だけではなく、グレーの部分がいっぱいある」と言うのだ。そんな彼女の言葉には、当然、女性たちから多くの批判を受けた。

だが、#MeToo関係者の仲間割れは、これが初めてではない。やはり#MeTooの代表的存在だったローズ・マッゴーワンは以前からミラノが嫌いなうえ、本人もなかなかの問題児だ。さらに昨年は、ワインスタインのレイプ被害者として名乗り出たアーシア・アルジェントが、未成年の男性と性関係を持ち、示談金を払っていたことが報道され、衝撃を与えている。

2017年は、ハリウッドは“セクハラ元年”だった。隠されていた性被害が浮上し、加害者たちの名前が明らかにされたのが、この年である。だが、そこは、あくまでスタート地点。

2019年の今、業界は今回のような「新しい問題」に直面した。ハリウッドはこれにどう対処し、ここからどちらへ向かうことになるのだろう。その答を、今はまだ誰もわからないでいる。

猿渡 由紀 L.A.在住映画ジャーナリスト

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さるわたり ゆき / Yuki Saruwatari

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒業。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場リポート記事、ハリウッド事情のコラムを、『シュプール』『ハーパース バザー日本版』『バイラ』『週刊SPA!』『Movie ぴあ』『キネマ旬報』のほか、雑誌や新聞、Yahoo、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。

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