アナ雪「立役者」再就職が女性の反感買う事情 「#MeToo」運動は2019年も生き続ける

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セクハラ問題でピクサーを離れたジョン・ラセターが、大手を振ってハリウッドに戻ってきた!?(写真:Jason LaVeris / FilmMagic)

「#MeToo」「#Time'sUp」ムーブメントから1年以上経つ今、ハリウッドの女性たちが再び怒りに燃えている。

2018年にピクサー・アニメーション・スタジオとディズニー・アニメーション・スタジオズ(ともに親会社はウォルト・ディズニー・カンパニー)のトップの座を複数のセクハラ告発で追いやられたジョン・ラセター監督(『トイ・ストーリー』『カーズ』などを手がける)が今年1月、スカイダンスに再就職したのだ。

スカイダンスは、オラクルの創設者ラリー・エリソンの息子デビッドが立ち上げたプロダクションカンパニー。父ラリーもオーナーに名を連ねる。ラリーの娘メーガンもアンナプルナ・ピクチャーズというプロダクション会社を経営するが、アンナプルナが政治的、社会的に意義のある小作品を専門とするのと対照的に、スカイダンスは『ターミネーター』『ミッション:インポッシブル』『スター・トレック』など大作映画を好む。

そんな彼らがハリウッドで稼ぎ頭であるアニメに進出すること自体は納得。しかし今月半ば、彼らはスカイダンス・アニメーションの新たなトップにラセターを任命した。ラセターの年俸は数億円単位とのこと。ディズニー時代に比べれば少ないが、彼はまたハリウッドを堂々と渡り歩ける立場になったのである。

「ジョン・ラセター起用」のどこが問題か

このニュースを受け、「Time’s Up」や、「Women in Film」「Women and Hollywood」などの女性団体は、ただちに抗議した。Women and Hollywoodの創設者メリッサ・シルバースタインは、「事実を伝えるために勇気を持って立ち上がったピクサーの女性たちに対する侮辱だ」と、この雇用を批判。

スカイダンス代表であるデビッドは社員に向けて、「外部のプロを使ってラセターの過去の行動を完全に調査した」とメッセージを送ったが、「どこまで調査したのか」「本当なのか」と、むしろ反感を集めている。

スカイダンスはパラマウントと業務提携関係にあるのだが、パラマウントにとっても、この発表は寝耳に水だったようだ。アメリカのエンターテインメント誌『The Hollywood Reporter』が伝えるところによると、パラマウント・アニメーションのプレジデント、ミレーユ・ソリアは、ミーティングで彼女の部下たちに、「スカイダンス・アニメーションから協力を求められても受ける必要はない」と述べたそうである。

スカイダンス内でも混乱が起こっているようで、彼らを前にラセターが過去の問題行動を謝罪し、「新たなチャンスを欲しい」と語った後には、若い女性スタッフから鋭い質問が投げかけられたとのことだ。

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