アナ雪「立役者」再就職が女性の反感買う事情 「#MeToo」運動は2019年も生き続ける

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彼の起用が問題視されるのには、さまざまな理由がある。いちばんは、ディズニーを休職してからたった1年ほどでラセターに“お許し”を与えてしまう事実。また、彼のセクハラ騒動はアメリカのアニメ業界に昔から存在する「女性蔑視の現状」を浮き彫りにした。それを受けて、ディズニーは彼に代わるディズニー・アニメーションのトップにあえて女性を選んだ(ピクサーの新たなトップは男性)。

ラセターの雇用は、こうした男女平等に向けた努力を無視し、無駄にする行動だと言える。だから多くの女性たちは、「(#MeToo以前に)後戻りしてしまう」と恐れるのだ。

『トイ・ストーリー』以来、ピクサーで数々の傑作アニメを送り出してきたラセター。ピクサーがディズニーに買収された後にはディズニー・アニメーションをも立て直し、『アナと雪の女王』(ラセターは製作総指揮を担当)をはじめとする大ヒット映画を作った。

ディズニーとしても彼を手放したくないというのが本音だったはず。実は、ラセターはスカイダンスの前にもほかのメジャーなスタジオと話し合いをしていたらしい。だが、株主の目が厳しいほかのスタジオは、セクハラ男の汚名を着せられた人物を雇うわけにはいかなかった。

一方で、スカイダンスはビリオネアの御曹司(デビッド)とビリオネア本人(ラリー)が所有する会社で上場していない。それでも、系列のメジャーネットワークCBSのレス・ムーンベスCEOがセクハラ騒動を起こしたばかり。提携関係にあるパラマウントだって、事前にわかっていたら彼らに忠告をしたはずである。

セクハラ加害者を許してもいいのか?

だが、再就職したラセターの将来は、決して明るくない。社内の反感を弱めるためにいちばんいいのは、女性を共同リーダーに任命することだろう。しかし、ラセターと協力関係を結んだ女性は同性から「裏切り者」扱いされる可能性が高い。

また、ラセターはもちろんアニメの歴史を変えたクリエーティブな人物ではあるが、ピクサーのほかの優秀な人材に支えられてもいた。その人たちを引き抜くことは、彼がディズニーを出て行く時の契約で固く禁じられていると聞く。ラセターが得意とするCGアニメは、伝統的な2Dアニメ以上に多くの人々を必要とする、完全なチームワークの賜物。だが、現状は彼について来る人材を集められるかどうかさえ疑問だ。

その一方ではまた、「セクハラ加害者は社会から永遠に葬られなければいけないのか」という議論もある。ラセターの“容疑”は、「不適切な振る舞い」と表現されており、具体的には、女性スタッフに対して不必要に長く、強烈なハグをしたなどの例しか挙がっていない。被害を訴えた女性が多数いることから、頻繁に起こったのは間違いないし、おそらく、ハグ以上のことはあったと思われている。

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