「時代劇」は衰退するだけのコンテンツなのか サスペンスで新味打ち出す「闇の歯車」の挑戦
現に日本映画放送が運営する「時代劇専門チャンネル」は、多くのシニア層の加入者に支えられているという。2017年には、同社が手がけた時代劇を朝10時から映画館で観賞できる「グッドモーニング時代劇」をテアトル新宿などでスタート。シニア層が多数来場し、成功を収めた。ネットでは、2018年6月から「amazonプライムビデオチャンネル」内に有料の「時代劇専門チャンネルNET」を開設。こちらも順調に視聴者数を伸ばしているという。
総務省が発表した統計によると、2017年の65歳以上の人口は3514万人で、人口全体の27.3%をシニア層が占める計算だ。そんなシニア層が時代劇を支えているのは間違いない。
ただ、そうした時代劇を支えていた視聴者層のさらなる高齢化が進む。将来を考えると、どうやって新規の視聴者を獲得するかが急務となっている。そのためには、時代劇という形式は守りつつも、ストーリーや見せ方など、幅広い層に見てもらうための新しい形を提示することが必要になっている。
「時代劇専門チャンネル」が手がけた「闇の歯車」は、そんな「新時代の時代劇」を予感させる作品となっている。同チャンネルの開局20周年を記念して、スカパー!やカンテレ、マイシアターD.D.と共同で製作された作品だが、物語は、行きつけの酒亭に集まる4人の男が、謎の男から、さる商家に眠る700両を盗むという悪巧みを持ちかけられるところから始まる。そこから、彼らの人生の歯車が、彼らを取り巻く女性たちをも巻き込み、静かに狂い始めるさまを描き出す。
オーシャンズ11ような時代劇をつくる
大きな特徴は、勧善懲悪という時代劇で抱くイメージとは異なる「本格的なサスペンス」に挑戦しているということだ。
時代劇専門チャンネル編成制作局の宮川朋之局長は、「時代劇で『オーシャンズ11』のようなサスペンスをつくりたかった。この原作なら、年齢差があるバディものとして見応えのある作品になるはず」と、この作品を選んだきっかけを語る。
原作は時代小説の名手・藤沢周平が発表した傑作サスペンスで、犯罪という人間のダークサイドに切り込んだ。そして俳優の瑛太を主演に、橋爪功、緒形直人、中村蒼、蓮佛美沙子、高橋和也、石橋静河ら豪華キャストが集結。従来の時代劇ファンはもちろんのこと、若者層にも訴求できそうなキャスティングだ。
チャンネル加入者以外にも観てもらえるよう、2月9日からの放送に先駆けて、1月19日より5大都市での映画館での上映にこぎ着けた。
従来の劇場作品は公開から半年後にDVD・ブルーレイなどのパッケージ化、さらにその半年後にテレビ放送という流れとなっているが、劇場上映と、「時代劇専門チャンネル」での放送開始を極めて短いスパンで展開。チャンネル加入者のみならず、より多くの観客が触れる機会をつくった。
劇場での先行上映について、前出の宮川局長は、「放送が先か、劇場公開が先かということにはこだわらない。むしろしっかりとお金をかけて、再放送に耐えうる作品を作らないといけないという思いのほうが強かった。劇場を通じて時代劇専門チャンネルのことを知ってもらえればいい」と語る。
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