「文系出身」を恥に思う若者に与えたい処方箋

一番大事なのは「普通の人」に寄り添えること

専門知識に詳しくないジョブズからのオーダーに、専門家たちはさぞかし苦しんだことでしょう。「そこまで言うなら、自分で作ってみろ」と思ったかもしれません。しかし、知らないことが力になることもあります。技術は、使われないと意味がなく、使う人(ユーザー)が満足しなければ使われません。

ジョブズは、自らの最も得意な領域(あるいはそれしかできない領域)であるユーザーに対する想像力を最大限生かし、どうすればユーザーが素晴らしい体験をすることができるのかのみを追求したわけです。それが世の中を変えるような製品の出現をもたらしたのではないでしょうか。

なまじ、専門家の気持ちがわかったなら、もしかすると、ジョブズの偏執狂的なこだわりは発揮されず、中途半端な製品しかできなかったかもしれません。

「わからない人」の気持ちがわかること

ここに、技術の時代、理系の時代における、「文系」の生きる道のヒントがあるのではないかと思います。真理の探究をする科学者になるのであれば別ですが、様々な制約条件のある実践の世界を生きるのであれば、本稿の表題のように誰もかれもが高い理系的センスを備えている必要はないのです。

優等生だった人が、劣等生の家庭教師をすると、「何がわからないのか、わからない」ということが多々ありますが、世の中の稀有な人材である「理系的センスのある人」になると、多数派である「理系的センスのない人」の気持ちがわからないかもしれません。

前述のように、理系の人と言葉が通じないのでは困りますが、最低限の理系の人と意思疎通ができる共通言語さえわかっていれば、後は理系的センスのない「ふつうの人」の気持ちをわかっていることを活かせばよいのです。

たいていのサービスや商品を使うのは「ふつうの人」です。彼らのニーズをきちんと想像できれば、それを理系の方々に伝え、実現してもらうことで世の中に貢献するのは十分可能だと思います。

文:曽和利光/株式会社 人材研究所(Talented People Laboratory Inc.)代表取締役社長
1995年 京都大学教育学部教育心理学科卒業後、株式会社リクルートに入社し人事部に配属。以後人事コンサルタント、人事部採用グループゼネラルマネージャーなどを経験。その後ライフネット生命保険株式会社、株式会社オープンハウスの人事部門責任者を経て、2011年に同社を設立。組織人事コンサルティング、採用アウトソーシング、人材紹介・ヘッドハンティング、組織開発など、採用を中核に企業全体の組織運営におけるコンサルティング業務を行っている。
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