旧国鉄と民間が激戦、欧州の「鉄道戦国時代」

上下分離で参入自由化、新参企業が絶好調

だが、順調には進まなかった。鉄道インフラを保有する旧国鉄系のRFI社は、行きすぎた低価格はもともと同地域で運行しているトレニタリアとのバランスが崩れる可能性があるとして、運行認可を与えなかったのだ。これを受けてアレナウェイズは同社を提訴し、判決が出るまではやむなくミラノ―トリノ間を途中無停車で結ぶ列車として認可取得にこぎ着け、2010年12月の冬ダイヤから暫定的に運行を開始した。

しかし、すでに同区間をわずか1時間弱で結ぶトレニタリアの高速列車「フレッチャロッサ」が運行されており、ノンストップで2時間以上を要するアレナウェイズは太刀打ちできなかった。途中駅への停車はできず、所要時間でも勝負できないという中途半端な状況で利用客は伸び悩み、翌2011年6月の夏ダイヤ改正で早々に運行を休止。巨額の負債を抱えた同社はその2カ月後にあっけなく破産してしまった。

翌年に営業を開始したNTV社の「イタロ」も、当初の予定より1年以上運行開始が遅れた。テスト走行中に謎の振動が記録されたことや手続きの遅れなどが原因と言われたが、そもそも手続きは非常に難解で、振動が記録された件も含めてRFI社の不当な言い掛かりではないか、とも噂された。

こうした事例はイタリアに限らない。その他の欧州諸国でも、細かいところで同じようなことが起きている。2020年にフランス国内高速列車事業への参入を予定している、イタリア鉄道のフランス子会社テッロ(Thello)に対し、フランス国鉄から手続きを遅らせるような横槍が入るのでは、などと噂されるのも、無理からぬことである。

このような、オープンアクセスが本来目指す目的である「真の競争社会」には程遠い状況となることを危惧したEUは、各国のインフラ会社へ対し、平等で公正な対応を取るよう求めている。

知らなければ切符も買えない

チケット販売においても、新規参入事業者は不利な状況にある。

ローマ・テルミニ駅構内に並んだイタロの券売機。同社のチケットはイタリア鉄道の窓口で販売されないため、目立つ場所に券売機を置くことで利用客を誘導している(筆者撮影)

まず駅では、旧国鉄系の中央窓口では取り扱っていないことがほとんどだ。たいていの場合は駅構内の商店の一角などに小さな窓口を設けている。民間鉄道会社の列車があることを知らなければ、中央窓口へ足を運ぶのが自然だ。つまり、ただ漠然と列車に乗ろうと駅に来た人をターゲットにするのは非常に難しいのだ。

インターネット販売も、自社サイトへ利用客を導くのは非常に難しい。これまで撤退を余儀なくされた民間鉄道会社の多くは自社サイトから直接予約を受け付けていたが、知名度が低く思ったような販売実績を残せなかったケースが後を絶たなかった。

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