旧国鉄と民間が激戦、欧州の「鉄道戦国時代」 上下分離で参入自由化、新参企業が絶好調

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チェコの民間運行会社、レオ・エクスプレス。チェコ国内での都市間特急運行に加え、ドイツではフリックストレインの運行も行う(筆者撮影)

レオ・エクスプレスのCEO、ピーター・ケーラー(Peter Köhler)氏によれば、同社の好調な業績はこのドイツ国内における利用客の増加が主な理由で、今後は需要を見ながら、ドイツ国内のほかの都市への区間延長と、ベルリン―プラハ間の国際列車への参入も検討するとの意欲を見せている。

このように一見、順風満帆のように見える民間鉄道会社だが、ここへ至るまでにはいくつもの大きな障壁があり、参入がもとで倒産した企業もあった。EU域内におけるオープンアクセス法が施行されたことで、民間企業による鉄道事業への参入が容易となったが、失敗せずに経営を続けていくために必要な条件とは何なのか。専門家の間では、以下に挙げる点が参入への障壁になっていると考えられている。

第1に、これまで独占的に運行を行ってきた旧国鉄系企業や、あるいはそれに準ずる鉄道会社からの不当な妨害が挙げられる。オープンアクセスの趣旨からいえば、参入は平等かつ公正に進められるべきだが、実際に各国での事例を見ていくと、スムーズに参入できたケースは少ない。

イタリア初の民間業者は半年で撤退

EUの目論見としては、市場開放によって複数の同業他社が参入し、競争が生じることで、サービスと価格の両面において、より市場が活性化されるというシナリオであった。

しかし大本を辿れば、運行会社とインフラ会社はもともと同じ会社だ。旧国鉄系の運行会社側としては、後から参入してきて自社のシェアを奪おうとする企業のことを快く思うはずがない。そこに具体的な妨害があったかどうかが公にされることはないので知る由もないが、これまでの各国の新規参入事例を見ても、すんなり運行開始できた例は少なかった。

最初に大きな問題となったのが、かつてイタリアで都市間急行列車を運行していたアレナウェイズ(Arenaways)だった。同社はわずか半年で営業をやめざるをえない状況となってしまったのだ。

同社はイタリア国内において、国際カートレイン(自家用車を目的地まで一緒に運ぶ列車で、欧州では一般的な旅の手段の1つ)の運行などですでに実績があり、2010年にミラノ―トリノ間で都市間急行列車の運行を開始する予定だった。

運賃は旧国鉄系のトレニタリアより低く設定、途中のノヴァーラやザンティアといった都市にも停車し、ロンバルディア州~ピエモンテ州に跨る中小都市間の輸送を担うはずだった。イタリア国内初の民間企業による旅客列車ということで、現地でも大きく取り上げられた。

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