「クリスマスは恋人と」っていつ決まった!? 「恋人同士がフランス料理を食べてホテルに泊まる祭」の起源

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ひとつは、年齢による変化がありますよね。おもちゃや野球道具や楽器や……と数限りなくあったはずの「ほしいもの」が、気がつくと「すでに持っている」か「もう別にいらない」のどちらかになる。自分が大人になり、それなりのおカネを手にし、衣食に特に不自由はない、となると、「ほしいもの」を聞かれても答えられなくなっていきます。

もうひとつは、その「衣食に不自由しない」、消費社会特有の変化です。1988年の西武百貨店の有名なコピー「ほしいものが、ほしいわ」(糸井重里)は、「ほしいもの」を探し出さなければいけない滑稽さを見事に表しています。

消費社会というのは、基本的な物欲が満たされてしまい、ほしいと思う気持ちを作り出さなければいけない社会。つまり欲求があって商品があるのではなく、広告によって、「ほしいと思う気持ち」を作り出すことに成功して初めてものが売れるという、「奇妙な」社会なのです。「ほしいものが、ほしいわ」はバブル絶頂期の倒錯した消費欲と、そのありかを探せない売り手の苦悩を、見事に表しています。

アメリカのクリスマス

短期間ですが、何度かアメリカに暮らして、クリスマスを過ごしたことがあります。もちろんアメリカでも、クリスマスはプレゼントの日なのですが、それ以上になんといっても、キリスト教の最も重要な祝日です。感謝祭が終われば、いろんなところで募金活動が始まり、スーパーにはフードドライブといって、生活に困る人たちに贈る缶詰を入れる、大きなドラム缶が置かれていました。

最近「あれ?」と思ったのは、「メリークリスマス!」一辺倒ではなくなったことでした。住んでいた地域が特にリベラルだったのも一因だと思いますが、ユダヤ教の人は「ハヌカー」、アフリカン・アメリカンには「クワンザ」という、それぞれの宗教的・文化的祝祭があるのだという議論が起き、あいさつは「メリークリスマス!」の代わりに「ハッピー・ホリディズ!」と言う人が増えました。前回も取り上げた「政治的に正しい用語法(PC terms)」の一種です。クリスマスカードで、「メリークリスマス」の代わりに「シーズンズ・グリーティングス(季節のごあいさつ)」と書かれたものが出てきたのも、その影響です。

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